「しとやかな獣」川島雄三 /大映三部作のシメのブラックコメディ

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短すぎる45年の人生故に、「晩年」という言葉は似つかわしいとは思えない。
この作品「しとやかな獣」も、密室劇の実験性を、独特の編集リズムと斬新なカメラワークでスタイリッシュにまとめた佳作で、決して死を前にした監督の作品には思えない。
娘を売れっ子の作家の二号に押し込んで、その両親は娘にあてがわれた公団住宅に済みついている。息子は、経理の女性(若尾文子)とつるんで会社の売上を横領しているが、その金も経理の女性に貢がれ、自分の旅館の建築費用に使いこまれている。
インチキ外人の歌手をかかえる芸能プロダクションの社長は、持ち逃げされたカネが経理の女性と営業の情事がもとになっていることを気付きながら、まだ女に未練がある。
全員、ワル。しかし、そこに奇妙な愛情関係がもつれあっているところが不思議である。
川島雄三は、若尾文子を主人公とした大映作品を立て続けに撮っていた。
1961年の「女は二度生まれる」、1962年の「雁の寺」、そして本作。
どれもこれも、人の俗悪な側面を一方で肯定しながら、同時にそれを否定するという不思議なロジックをもっている。
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無表情だったとしても、福々しいあどけなさと残酷なまでの美貌の鋭利さを兼ね備えて、決してそれがぶつかりあわない魅力をもつ、若尾文子の顔かたちが、この矛盾をうまく物語的にまとめあげるのが、本当に不思議である。
才能が煌めくブラックコメディの佳作ですね。

「しとやかな獣」予告編

川崎市アートセンター・アルテリオシネマ、特集「異彩の系譜」にて。

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1コメント

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  1. 映画 しとやかな獣 をみた

    しとやかな獣 [DVD]クリエーター情報なし角川映画
    この映画の登場人物はほぼ全員が悪人である。舞台は団地の一室でセリフ劇。そしてそれぞれに奇妙な愛情関係が成立している。
    テンポのよいセリフと緊張感のあるストリー。人間の業にせまったいい作品だ。
    キャスト
    若尾…

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