「ザ・ファイター」デビッド・O・ラッセル /失速して感動映画に着地

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◇『ザ・ファイター』公式サイト
先日観に行った『ブラックスワン
ダーレン・アロノフスキーと知らずに、その名前をエンドロールで確認してから、その前作『レスラー』との対照性の妙味にしてやられました。
この監督、これからひとつたりともこれから見逃せないな・・と思い、ネットでチェックすると本作『ザ・ファイター』もこの人の作とのこと。
さっそく近くの古い映画館に駆け込み鑑賞。映画のストーリーが転機をむかえるまでは、すっかりアロノフスキー作品と思って観てました。
おかしいぞと思いだしたのは、主人公が刑務所から出てきた兄と対峙して、彼のサポートを断るシーンのあたりから。
このへんから物語が失速していくんですよね。
あ、「感動のスポーツドラマ」を期待する人には、このへんから感動ボルテージが上昇していくんでしょうけれども。
けど、自分はキツネにつままれたように、兄弟の和解シーンをなすすべもなく見守るだけでした。
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プワホワイト(白人貧困層)の物語の中で、なすすべもなくその境遇におしながされていく物語だと、ちょっと前なら「フローズン・リバー」。その映画の主演だったメリッサ・レオが、この映画の母親役。
主人公の恋人役はエイミー・アダムス。この人もちょっと前に「サンシャイン・クリーニング」で、そんなプアホワイトの中で前向きに生きていくシングル・マザーを演じていました。
うんざりとするような泥沼の生活ならば、黒人家庭の悲惨な境遇をガッチリと描いた「プレシャス」あたりになるんでしょうが、そこまではいきません。むしろアジア人に囲まれる白人の生活の物語「グラン・トリノ」となります。
最初の主人公の対戦相手が、「黒人でユダヤ教徒」というのも、なんとなくモハメド・アリ(彼はイスラム教徒でした)を思い起こさせるし、そういう黒人との対比は、今度は「ロッキー」ですね。
ロッキーはイタリア系ですが、この主人公一家はアイルランド系。主人公が、アメリカにおける白人マイノリティというところも「グラン・トリノ」。
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オスカー助演男優賞のクリスチャン・ベイルは、ボクシングの映画でマーティンスコセッシ監督(途中まで監督をする予定だったらしい)予定だったからなのでしょうか、やたらにロバート・デニーロみたいです。モノマネやらせたらうまいんじゃないでしょうか。”You talking to me?”とかやってほしかったです(笑)
撮影のために歯を矯正して、減量をした役者バカのところまで「レイジングブル」のデニーロなのは何をかいわんや。
そして、最後に、なによりも「レスラー」(笑)
70-80年代のロックミュージック、これみよがしにレッド・ツェッペリン、エアロ・スミス。
地元の水商売の女(「レスラー」では風俗でしたが)に惚れる主人公。過去の栄光にしがみつく一家。そして、見世物的なスポーツエンターテインメントの裏側。
これは、スコセッシに監督を断られた後にアロノフスキーが監督を一時引き受けていたところの残滓なのでしょうね。(結局、アロノフスキーは製作総指揮でこの映画に関わっています)
けどね、いくら映画がコピー&ペーストでもいいんですよ!
この映画の最初の一時間くらいまでのカメラ、アイディアにも富んでいてすごくいいし。
ドラッグまみれながら、切っても切れない母系家族の澱んだ絆のようなところの描写も面白い。沸々と物語が煮えてます。
けど、そこからなんでこの家族はここまでどうしょうもない人たちなのに、あっさり和解にいたるのでしょうか。
突然お棺の中から出てきてハロー!と挨拶されたような気分なわけです。
これは実話なんですから、いたしかたないわけなんでしょうが。
ハッピーエンドにむけて、そそくさと店じまいを開始したのでしょうか。閉店間際、レストランに訪れてラストオーダーを頼んだ後の店員のようなあしらい。

さて、映画の中で、自分たちのテリトリーではない高級住宅地の映画館で、主人公と知り合ったばかりのバーの女(エイミー・アダムス)は、フランス映画(名前忘れました。誰か教えて~。)を観ることになります。
育ちの良さそうな通りがかりの学生風情は、「絵がきれいなんだよねー、名作だよ!」みたいなことを言うわけですが、あまりにもつまらなくて、主人公は寝てしまいます。
「こんなセックスシーンも盛り上がりもない映画に連れてくるなんて!」とエイミー・アダムスの彼女はおかんむり。
むー、なるほど、この映画はそういう人のための映画になっているわけですか(笑)
このシーン面白かったです。
そうですよね、感動のスポーツ映画こそが、みんなに求められているものなんですよね・・・。。あの映画に出てくるフランス映画をほめていた学生くんに、この映画の感想を聞きたいところです(笑)
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あ、エイミー・アダムスは「ダウト」に引き続き、よかったです!
FWF評価:☆☆☆★★

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