「サンザシの樹の下で」 ストライクを置きにいったチャン・イーモウ

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いきなりですが、この映画で不思議だったのは、主人公の恋人の青年の死の原因。
文革の中、知識人やエリート層が徹底的に弾圧され、農民や労働者こそが正しい生き方であるとされた時代に、この青年だけは「給料が良い」仕事についている。
親はどうやら党か国の偉い人らしく、足をやけどした主人公の女のコを連れていく病院は軍の病院。軍の病院といえば、この時代ならば、一般の人間は治療できないVIPなところでしょう。
働いているのは「地質調査」の仕事。
軍のものらしきテントが張られた河川敷には、異様に聳えるボーリング重機らしいものがあります。
「健康診断」のために入院していた病院からいなくなって、主人公は青年を探しに、この地質調査の作業テントに行きますが、どうやら「白血病」で亡くなった人は他にもいる様子。
しかし、青年は「白血病」と噂されているのですが、本人と病院は否定。
そういえば主人公が自分の腕を切ってみせるシーンでは、「なかなか血がとまらない」という体質と自ら言わせています。
ここからネタバレ少し入りますが、主人公が臨終のベッドにいるシーンでは、外傷とは思えない色に体中変色しており、相当にただならぬ病であることを感じさせます。
この映画、中国系アメリカ人が文革時代に体験したことの実話がベースとなっている小説が原作としてあるそうですが、そっちではキッチリここは書かれいてるんでしょうかね?
いろいろ状況証拠?をつなぎ合わせてみると、地質調査とはウランか何かで、それで被爆してしまったと憶測できるのですが・・・。
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映画は直球ど真ん中の純愛悲劇。
ひねりがあるとすれば、文革の時代を背景としているところと、なにやら謎めいた青年の死のあたり。
抗日戦争の死者がここに埋められたため、本来は白の花のサンザシが赤く咲くという言い伝えも、映画では確かめられることなく終わります。
本来ならば必要のないはずの、場面転換を説明する字幕をわざわざつけておきながら、こういうところは置き去りにするところは、逆に映画のストーリーテリングの妙味を感じます。
良い映画です。
ただし、野球でいうならば、「置きにいった球」というところでしょうか。
この球はストライクを確実に取りにいくための慎重な一球、それが「置きにいった」という野球の表現。
もちろん、この表現は悪い意味でつかわれることがほとんどなのですが。
置きにいった球を打たれたというのは、リスクを恐れて全力で投げていないということでもあります。
そういう意味でストライクは取れましたが、うーむ(笑)
チェン・カイコーはチャン・イーモウを評して曰く、「アタマのいい人」と。確かに映画人として決して道を踏み外さないこの人、配球術もアタマがいい。
中国では文芸映画としてはかなりの大ヒットだったそうですね。

そんなわけで、泣けるということが映画の楽しみのひとつみたいな人はいいんじゃないでしょうか。
泣くことが楽しみならばタマネギでもむいていろ、というのはダレが言った言葉なのでしょうか。名言ですね(笑)
チャン・イーモウ大好きな人もよかれと。うまい映画ではありますし。
あ、それから特筆すべきはこの主演女優ですね。
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微妙な感情の演技やナイーブさを言いようもなく的確に表現できる体躯など、さすがは女優発掘のスペシャリスト、チャン・イーモウ!
FWF評価:☆☆☆★★

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1コメント

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  1. 映画「サンザシの樹の下で」おとぎ話のような純愛

    「サンザシの樹の下で」★★★★
    チョウ・ドンユィ、ショーン・ドウ、
    シー・メイチュアン出演
    チャン・イーモウ監督
    113分、2011年7月9日より順次公開
    2010,中国,ギャガ
    (原作:原題:Under the hawthorn tree )
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