オナニーでなにが悪いのか / 『ブラウン・バニー』 ヴィンセント・ギャロ

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ブラウン・バニー – goo 映画
シネマヴェーラの特集「アメリカン インディペンデント魂!」は良い企画だった。
ガス ヴァン サントやソダーバーグの2000年代前後の重要作がスクリーンで観れるのは本当に嬉しい。
この手の映画だとレンタルで借りるの探して回らねばならない。先日、『レニングラードカウボーイ』を渋谷のTSUTAYAで見つけたが、なにやら「名作価格」だそうで580円のレンタル代。それなら名画座にかかるのを自分は待つ。ちなみに『アギーレ 神の怒り』はVHSのみ。ケン ローチの諸作品もほとんどがVHSだけ。まだまだ映画館のやることはあるのではないか。
さて、インディペンデント(独立系)というと、低予算の自主制作の映画という響きもあるが、アメリカの場合インディペンデント映画というのは、メジャー映画会社以外の制作作品を指すので、ちょっと日本の感覚とは違う。
昨年、イギリスで「最高の米インディペンデント映画50本」という企画があったが、一位の『ミーンストリート』はともかくとして、ジェームス・キャメロンの『ターミネーター』が入っていたり、この映画祭でもスコセッシの『ギャング オブ ニューヨーク』のような「大作」が入っていたりする。
俺はなんとしてもこれがやりたいんだ!というのがインディペンデント魂というところだろうか。それでもうまくやれる人もいる。『マルホランド ドライブ』などはテレビ企画でスタートしたものが映画になったりしている。たいしたものだ。
こうしたインディペンデント映画とは違い、正真正銘の自主制作映画の吹きっ晒し感覚の作品が、本作『ブラウンバニー』
自分の中で忘れられない名シーン、ボウリング場のレーンの前でピンスポットに照らし出されながら、キングクリムゾンの『ムーンチャイルド』(!)でヘタクソなタップを踏むクリスティーナ・リッチ。それが『バッファロー66』。

Moonchild – Buffalo ’66 from Caroline Verner on Vimeo.

この素晴らしい作品で監督をしたっきり音沙汰なくなり、そして出てきたかのがこの作品。しかも、ほとんど自主制作映画(笑) たぶん俳優以外のスタッフは、製作・監督・撮影・衣装のビンセント・ギャロと、サブのカメラマンと照明さんぐらいなのではないか。
それほどの手作り感に充ち溢れている。
映画の時間のかなりの部分を占める車の中の運転シーンも、明らかに自分でカメラをセットして、それから撮影に入った映像っぽい。そんな手作りシーンの連続から、最後は身も蓋もないようなファックシーンとストーリーの急転換。
考えてもみれば『バッファロー66』も、得体の知れない失意と復讐の念にかられる男の鬼気迫る様相をずっと捉えていた作品だった。コミカルなチビでふとっちょの金髪娘を配置したところが、またミソなのだが、今回はそういう楽しさの部分がない。ストレートすぎる一発映画である。カメラも逃げない。延々と回される。これが独自の余韻をつくる。
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この作品を観る者のことを考えないオナニー映画という人もわからんでもないです。しかし、なかなかに志は高く、単なる素人映画の域は超えている切実さは感じられる。出てくる登場人物もそれを演じる俳優もしっかり役目を果たしている。なかなかですよ。
主人公も主人公の彼女も時折ナンパされる女たちも、なかなかのシロモノです。魅力的。
太宰治はいいました。文学を書くとは、往来で裸で大の字になるようなものだ、と。
そうですよ、オナニーでなにがいけないのか?そもそも芸術からオナニー要素取り除いたら単なる商売でしょ。
そういう論理でこの映画をけなすなら、マーケティングの甘ったるいソースをどっぷりかけたシネコン映画でも観てなさいってことです。
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そんなわけで、非常に楽しみました。フィルモグラフィーを見ると、2010年に75分の白黒フィルム”Promises Written in Water”を撮ってますね。全然知らなかった。日本でやってくれないかな。

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