カテゴリー: 映画評

VFXの動物映画 / 『戦火の馬』 スティーヴン・スピルバーグ

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「戦火の馬」公式サイト
黒澤明が晩年に馬について語っていたことがある。
それは現代の馬というのが集団訓練されているものがほとんどなく、合戦シーンで馬を使うのが本当に難しいという話。撮影用の馬をかき集めても数頭しか集まらない。だから合戦シーンで馬はもう使えないのではないかということでした。
そんな黒澤明の懸念はよそに、世の中の進歩は著しく、馬もVFXを駆使すればあら不思議。見事に集団行動で戦闘シーンに参加できるようになりました。… 続きを読む

オナニーでなにが悪いのか / 『ブラウン・バニー』 ヴィンセント・ギャロ

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ブラウン・バニー – goo 映画
シネマヴェーラの特集「アメリカン インディペンデント魂!」は良い企画だった。
ガス ヴァン サントやソダーバーグの2000年代前後の重要作がスクリーンで観れるのは本当に嬉しい。
この手の映画だとレンタルで借りるの探して回らねばならない。先日、『レニングラードカウボーイ』を渋谷のTSUTAYAで見つけたが、なにやら「名作価格」だそうで580円のレンタル代。それなら名画座にかかるのを自分は待つ。ちなみに『アギーレ… 続きを読む

お茶の水から神田にむかう中央線の光景について  -ホウ・シャオシェン『珈琲時光』がつなぐ戦前の台湾系日本語作家と横光利一

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以下は吉本隆明への追悼まじりの思い出と、『珈琲時光』がつなぐ戦前の台湾系日本語作家と横光利一のつながりについての雑文。

吉本隆明の「わが転向」の東京にまつわる書籍のエッセイに、横光利一が東京の風景で1番好きなのはお茶の水から神田駅のほうへ向かっていく中央線を、橋の上から眺めた光景、との記述がある。そして自分もそれが好きなのだと。

え、それってホウ・シャオシェンの「珈琲時光」のラストシーンじゃん!いきなり慄いた。自分も大好きな映画である。… 続きを読む

細かすぎて伝わらないモノマネ映画 /『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

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サッチャーの英国治世を、ざっくりと振り返るならば「サッチャー時代のイギリス―その政治、経済、教育」(森嶋通夫)が良い。
功罪様々なサッチャーを理解することが出来る名著である。
なお、この森嶋氏には「ブレア時代のイギリス」という著書もあり、これも面白い。
この映画の宣伝文句をつらつらと読んでみると、英国経済を立て直したとか新自由主義へ舵を切り英国再建を断行したうんぬんというのが書いてある。
このような浅はかな歴史解釈の書き手を非難するつもりはないのですが、正直どうかと思いますよ。というか、この映画を観て単純にサッチャーを尊敬しますというような感想を書いている人は、イギリス現代史に無知ですと表明しているようなものなのではないか。ケン・ローチは泣いていますよ(笑)… 続きを読む

2012年1月に観た映画

◇1月に観た映画
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「ヒミズ」 2011年 監督: 園子温
「国境の町」  1933年 監督:ボリス・バルネット
「ひまわり」 1970年 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
「いちご白書」 1970年 監督:スチュアート・ハグマン
「CUT」 2011年 監督: アミール・ナデリ
http://masterlow.blog74.fc2.com/blog-entry-368.html
「クレイマー、クレイマー」 1979年 監督:ロバート・ベントン… 続きを読む

2011年の映画100本とベスト3

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2011年のベスト3です。
その前に、2011年劇場観賞映画全作品100本ジャストをまとめてみます。
ちなみに、この100本という数字、この数年コンスタントに年間140-150本は観ていたのに激減です。
理由はふたつ。ひとつは東北大震災とその後の電力事情のために、一時映画館そのものがやっていなかったため。また、そこから約2カ月、震災ボランティア関係に注力していたこと。
もうひとつは、本業その他が昨年の後半からバタバタしだしてしまったこと。サラリーマンやめたから、映画自由に観れるぜー!などと考えていたのはまことに甘い見通しだったと言わざるをえません(笑)… 続きを読む

正統派カルト映画の熱血にやられた! 「CUT」 アミール・ナデリ

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◇「CUT」公式サイト
この映画「CUT」の基本思想は、「シネコンで流れているクソ映画」「映画は売春婦じゃない」「カネ儲け主義のクソ野郎から映画を取り戻す」。そして朗々と殴り続けられる主人公の映像に、短くカットインされる珠玉の名作100本。
もう手放しでおまえ(監督)に賛成したくなる主張に、映画館内で久々に興奮いたしました(笑)
もちろんこんな映画純粋芸術論は無茶苦茶なわけですよ。
映画は最初から芸術ではなかったわけです。出自はエンターテインメントで興行とか見世物でした。今でもそうです。… 続きを読む

太宰曰く「男の本質はマザーシップ」 「クレイマー・クレイマー」 ロバート・ベントン

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クレイマー、クレイマー – goo 映画
若かりし日の吉本隆明(吉本ばななの父ちゃんの偉いひと)が、当時の文学青年のあこがれの存在であった太宰治のところを尋ねたときのエピソードが、ずっとひっかかっていて忘れられない。
-「太宰さん、いま重くないですか」と聞いてみた。「そりゃあ、重いさ。だけど、お前、男性の本質は何か知っているか」と言うから、「いや、全然わかいません」と答えたら、「それはマザーシップということだよ」って言ったんです。 … 続きを読む

2011年12月に観た映画

「鉄道員」 (1956年) 監督:ピエトロ・ジェルミ
「歴史は女で作られる」(1956年) 監督:マックス・オフュルス
「ベニスに死す」 (1971年) 監督:ルキノ・ヴィスコンティ
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「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」 (2011年)監督:ブラッド・バード
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現代の腫れた足の神話 / 『灼熱の魂』 ドゥニ・ヴィルヌーヴ

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「灼熱の魂」公式サイト

正月一番の映画には、まずはシネマヴェーラで「映画史上の名作」にて幕開け。
いやまあこんなもんだよねー、とMGMの1950年代のミュージカル小品を適度に楽しみつつ、翌日に銀座に向かいました。
ハイ、完全に油断しておりましたよ。
正月気分でシャンテに行って、ドスンとレバー直撃の重いフックをくらったようなダメージです。
これは凄まじい映画です。ミステリー仕立てながらも、なんという掘り下げた人間に対する思想。器用にまとめられた映画にして、しかし語られている内容は徹底的に重苦しく、暗黒に包まれ、パンドラの箱を開けた禍々しさに耐えねばなりません。… 続きを読む

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