カテゴリー: 映画評

ちょいワル親父なんてこんなもんさ / 「エレジー」 【映画】

◇「エレジー」公式サイト
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たとえば、悪い親父と小娘の恋愛といえば、まずは思い出すのはベルトリッチの「ラスト・タンゴ・イン・パリ」
得体の知れないハゲオヤジ(落武者風)の荒くれに翻弄されつつ、最後に立場が反転する仕掛けが大変印象的な映画であった。
また、作家のオヤジと小娘の恋愛といえば、たとえば「家宅の人」。緒方拳が異彩を放つ演技で女優陣をうまく引き立てていた。
この映画に出てくるオヤジは、いわゆる「ちょいワル親父」。… 続きを読む

オンナたちはオシャレに生きている / 「キャラメル」 ナディーン・ラバキー 【映画】 

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恋と人生に悩むオンナたちの日常の生き様を描く映画・・・単にそれだけのものならば、物語のエンジンをかける仕掛けが必要となる。
この映画の場合は、レバノンのベイルート。
フェニキア人の昔から栄える古都、さらにはフランスに占領されていた他民族他宗教国家のモザイク模様が、独特の彩りを物語に与える。
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ちょっとしたトラブルで「おまわりさん」につかまる婚約者の男のシーンでは、どう見てもその警察官はフル装備の兵隊にしか見えない。… 続きを読む

たとえどうしょうもない映画だったとしても / 「少年メリケンサック」 宮藤官九郎 【映画】

◇「少年メリケンサック」公式サイト
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バンドの映画のくせに、いい曲が一曲もない。
出てくる音はアンプ直結のベースのせいでずっとヨレヨレしている。
本当に聴くに堪えない。
世界観は最初から最後まで、うんこちんこ○んこ+ゲロ嘔吐。
佐藤浩市のパンクス演技は最初から最後までぎこちなく、ストーリーも少年マガジンなみに無理がある。有り体にいえば連載途中で終わってしまうレベルのコミック。
おおげさだから面白いってわけじゃねーんだよ、ユースケ・サンタマリア!… 続きを読む

幸福なアメリカ人の暴走 / 「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」 【映画】

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日常の生活に潜む「絶望的空虚」を見出してしまった嫁を抱えて、右往左往させられるダンナの物語
・・・っていうのが一行あらすじですね。
「絶望を感じるには勇気がいる」と無粋で毒舌なメンヘル数学者が、その嫁に共感していたりするんですが、幸福と不幸の定義が反転する構造を示唆するストーリー的な仕掛けってそこぐらいですか。印象深くはあるシーンではありましたが。
まあ、アメリカ人の白人の金持ちって、どうでもいいことでどうでもいい暴走をするんだなー、その程度で物語になると思っているんだなあ~・・・って感じです。これは「イン・トゥ・ザ・ワイルド」を観たときの感想と同じですが。そんな大げさな話かよ?… 続きを読む

主役の顔は大切ですね / 「プライド」 【映画】

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少女マンガが原作ということで、まあそういうストーリーなんだろうなあ、と肩の力を抜いて見に行きましたが、そういうお話でした。
場面展開もストーリー仕立ても独特な少女マンガフィーリングです。それに耐え忍ぶことによって、はじめて何ごとかの感想を語り始められる映画です。
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主役の顔というのは重要です。映画そのものを決めてしまいます。
主役のステファニーの、映画俳優らしからぬ動かない表情と棒読み調のセリフ回しは、そういう役柄だから成り立つもの。ギリギリである。… 続きを読む

引き出しの中の雑然とした夢 / 「ワンダーラスト」 マドンナ 【映画】

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果たして、この映画がマドンナ監督というのを完全に伏せていたならば、日本で見れたのだろうか?という疑問は最後まで払底できない。
インド人の子沢山で嫁には頭が上がらないインド系の薬局の主人。
SMのアルバイトをしている、ロシア系ミュージシャン。
バレリーナを目指しているショーパブの踊り子。
アフリカの飢えた子供を救うことを夢見る薬局のアルバイト。
詩を捨てた盲目の詩人。
堕ちこんだ世界から仰ぎ見る視線は様々だが、どうにもこうにも葛藤や苦悩は巻き起こらず、中途半端な生活描写や小さなコミカルなエピソードに包まれたまま、唐突なエンディングに至る。… 続きを読む

戦闘シーンは完璧です・・が / 「戦場のレクイエム 」 フォン・シャオガン  【映画】

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ようするに、国共内戦でがんばったのに、逃亡兵扱いされていて、戦死者扱いされてもらえなかったのが悔しかった・・・という話です。
日本でいうと、遺族年金支給されないし、靖国神社にも祀られない兵隊さんの話というところでしょうか。
ひたすら前半は戦闘シーン。
後半は、投降してきた兵士を許さなかったレベルの知性の荒くれ連隊長が、名誉回復していくストーリーです。
俺らはラッパが聞こえるまで、とがんばりましたが、全滅しました。部下は全員死にました。なのにこの扱いはなんだ!そういう話です。… 続きを読む

こういうムスリムの書き方にはうんざり / 「ワールド・オブ・ライズ」 リドリー・スコット 【映画】

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「イスラム原理主義者は、ムスリムの教えを信じるものか、異端として排除するかのどちらかだ」というようなセリフが出てくるんですが、もともとイスラム経は、キリスト教やユダヤ教を同じ神をもつものとして、それなりに尊重しているし、その信仰をやめさせるようなことはありえない。
そんなのは初歩の初歩で、ちょっとでもイスラム教やアラブの歴史を知っていれば、そんなセリフはつくれない。
モハメッドを最後まで保護したおじさんはキリスト教徒だったし、メッカでの迫害のために非難していたのも、当時キリスト教の影響下にあったエチオピア。… 続きを読む

贅沢な映画ファンのためのメタ映画 / 「その男ヴァン・ダム」 マブルク・エル・メクリ 【映画】

◇「その男、ヴァンダム」公式サイト
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作品冒頭、いきなりワン・ショットのものすごい戦闘シーンが出てくるんですけど、それが撮影だったというオチで、あげくに、英語が話せない中国人?監督から、ダメだしされる・・・というところからはじまるんですが、これがまた本格的なんですよね。
ここで単なるパロディ映画じゃねーぞ、これ!といきなりやられるわけです。
ミソなのは、映画自体はコメディ仕立てではまったくないところ。全体の構成は、普通のアクション映画なんですよ、これが。… 続きを読む

なるほど、夜の話ならジョニー・トーということですね / 「僕は君のために蝶になる」 ジョニー・トー 【映画】

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成就しない恋愛のまま、不幸にもその相手を失って、精神を病む主人公の司法修士生の心の葛藤をめぐる物語。
幽霊になって現れるその元カレとの不思議な「体験」がおおよそのあらすじだが、恋愛映画としては荒唐無稽になりそうな話を、カレの復活した分身のように、不幸な物語を反復していくチンピラの筋立てと、陰影を大事に取り扱ったカメラワークが救っている。
なるほど、幽霊の話だから、舞台は夜。それならジョニー・トーの出番もあるわけですね。… 続きを読む

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