カテゴリー: 映画評

嫌悪に充ちた美と北杜夫と三島由紀夫と園子温 / 「ベニスに死す」ルキノ・ヴィスコンティ

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『ベニスに死す』公式サイト
トーマス・マンの『ヴェニスに死す』を読んだのは、中学生の時だった。なぜこのような死と没落と少年愛という禁忌に満ちたテーマの作品をわたくしが読むことになったかといえば、それは先ごろ亡くなった北杜夫の影響です。北杜夫はトーマス・マンの大ファンで、自分のペンネームも実はトーマス・マンの『トニオ・クレーゲル』からとったものでした。
(杜二夫=トニオ→あまりにもそのままなので”二”を抜いて杜夫のペンネームに)… 続きを読む

マーラーとカフカと田村隆一 / 「恋の罪」 園子温

恋の罪01
映画館の暗闇が引けたときに座席に座りこみながら、まず思いだしたのは、G.バタイユの次のような一節。

おまえは、どんなものにも、あからさまな貌と隠された貌とがあることを知らねばならない。おまえの顔立ちは高貴だ。(中略)だがおまえのドレスの下にのあの軟毛に包まれた部分が、おまえの唇ほどの真理を持たぬわけではない。あの部分は、ひそかに汚物へと開かれている。あの部分を抜きにしては、あの部分の用途につながれた屈辱をぬきにしてはおまえの眼の命ずる真理もしみったれたものになってしまう

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「リリー」 チャールズ・ウォルターズ 

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リリー - goo 映画

1953年MGMのミュージカル映画。小品風情のストーリーですが、世評は高いですねえ。
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父の死によって孤児となった16歳のリリー(レスリー・キャロン)。
ひょんなことからサーカスの一団に職を得るが、少しぼーっとしたこのコはすぐにクビになってしまう。
行き場がなくなったリリーに呼びかけたのは、人形劇のマペット。このマペットとの共演が評判になるものの、これを操る元ダンサーのひそかな恋心は通じることがない。… 続きを読む

「しあわせだよ」の嘘/ 『監督失格』平野勝之 

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「監督失格」公式サイト
この映画を観て、2つだけ自信をもって断言できることがある。身も蓋もないこと承知。
ひとつめは、林由美香という人が自転車旅行でのテントでつぶやく「しあわせだよ」という言葉がほんとうの言葉ではないということ。
ここでいう「ほんとうの言葉ではない」というのは、ドキュメンタリーのなかでフィクショナルに用意されたセリフと指摘しているのではなく、ただ単に彼女はそんなことはこれっぽっちも思ってなかった言葉だということ。… 続きを読む

あの島のかたちは・・・「アンダーグラウンド」 エミール・クストリッツァ

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アンダーグラウンド - goo 映画

もう何年も前に観たこの映画について、ひとつだけ確認したかったことがある。
それはラストシーン。
鵞鳥か何かの白い鳥が列をなし水辺にあがると、その向こうの岸辺では何か楽団とともに酒宴が行われている。
あれは主人公のおっさんと、もう何十年も前に死んだはずのかみさん。
そこに先ほどのシーンで惨殺された、主人公の親友にして、実は主人公を騙くらかして幽閉した張本人である元ユーゴラスラビア共産党の幹部と愛人。愛人は主人公の愛人でもあったから、かみさんはこの酒宴に同席するのに納得しないものの、しかたないかと受け入れるそぶり。… 続きを読む

「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」バッド・ロボット全開 

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http://www.mi-gp.jp/
監督にブラッド・バードというアニメ映画監督が「抜擢」されているようですが、まあこれってバッドロボットプロダクション、つまりJ・J.エイブラムスパワー全開の映画です。
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プロデューサーに名を連ねているのは、トム・クルーズとブライアン・バーグ、そしてJ・Jの三人。ブライアン・バーグはバッドロボット社の副社長。つまりJ・Jの右腕というところ。この2人のフォーメーションは、「クローバー・フィールド」、「スタートレック」そして「スーパー8」と続いております。… 続きを読む

「ジュリア」 闘うフェミニストの時代の秀作!/フレッド・ジンネマン

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ジュリア – goo 映画
この映画を観るための前提知識は、主演の2人の女優と監督の経歴について。
アカデミー賞にノミネートされたこと自体が驚くべきことも知っておいたほうがよろしいかと思います。
まずは、ジェーン・フォンダ。
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ベトナム反戦運動に深くコミットした彼女は、この時代の「ウーマン・リブ」の象徴的な存在になっていました。けれどヴェトナムに取材に行った際に、こともあろうかヴェトコンの陣地で彼らのヘルメットを被ったところを写真に撮られて、アメリカ国内で大批判を浴びます。… 続きを読む

パニック映画の機能美「コンテイジョン」/スティーブン・ソダーバーグ

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「コンテイジョン」公式サイト
スティーブン・ソダーバーグのクールな作風に慣れてない人には全くオススメできません。
シネコンの娯楽作として、パンデミックの恐怖をエンタメ化した作品を想像した人にも難しいでしょう。この作品にはお涙もありません。さらには恐怖すらもそんなに描きこまれてません。けれど秀作です。いかにもソダーバーグらしい作品。
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俳優ですらそんなに感情移入させないように、さらりと書いていきます。パタパタと死んで行くのです。マリオン・コティアールなどは、最初にちょろりと出てきて、最後まで出てきません。… 続きを読む

みんなで集まるサッカークラスタ大忘年会 -神田サッカーナイト2011-

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サッカークラウタゆく年くる年ラウンジ忘年会「帰ってきた神田サッカーナイト2011」
毎年恒例のFWF忘年会ですが、すでにサッカーサイトとしての機能が薄まりつつ(笑)、それでも決行するのがどうかと思い、場所が神田となったことから、「帰ってきた神田サッカーナイト20111」と、世代属性性別出処前歴を問わないイベントとすることにいたしました。
浜村真也さん(仮名)には許諾とってませんが、まあいいのではないでしょうか!… 続きを読む

無音のマティーニ/「ゴモラ」 マッテオ・ガローネ

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「ゴモラ」公式サイト
静寂な映画である。どういうことかと思うほど、音楽が全くない。
エンドロールにほぼ初めて音楽らしい音楽が出てくる。これがまたセンスのいいミニマルミュージックなのだが、そういう趣味が出せる作り手が全く音を出さなかった。
これはなかなかの覚悟だと思う。
これが凝ったサウンドスケープのために音を落としているというわけでもない。
2009年にカンヌで監督賞をとったフィリフピンのブリラント・メンドーザ… 続きを読む

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