カテゴリー: 映画評

濡れたアスファルトの路面は男の舞台 / 「デス・レース」 ポール・W・S・アンダーソン 【映画】

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闇の中を、鈍器のようなものが飛び交い、鋼鉄のクルマが走り回る。オープニングからして、鉄工所をリストラされるシーンから始まる、まさに「鉄」がテーマといっても過言でない強力B級アクション。
「鉄は国家である」といったのはドイツの往年の名宰相だったが、映画では鉄は漢のテーマに他ならない。
意味もなくどこかしこの路面も、水に濡れていて、暗闇にギラギラと光を反射させている。これもまた、野郎の世界のお約束の舞台まわし。… 続きを読む

小さく慎ましやかな佇まいのラブ・ロマンス / 「ブロークン・イングリッシュ」 ゾーイ・カサヴェテス 【映画】

◇「ブロークン・イングリッシュ」公式サイト
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単なるアラサーのラブ・ロマンスと片付けるには惜しい佳作。
丁寧に光と陰影を映像の中に取扱い、心理描写もこれまた繊細。
揺れ動く主人公の心理も適度に抑えた演技のまま。これが悪くない。
テレビドラマのラブ・ロマンスのジェット・コースター的なストリーリーの荒唐無稽さに慣れた女性には、刺激は感じられないかもしれない。しかし、自分にはこういう抑制の美学で、十分だ。そんなに笑えないし、泣けないし、だからといって、それが不要というものではない。そんなことが大人の女性の恋というものなのだろうから・・・と解釈する。… 続きを読む

おぼっちゃんの自殺願望につきあえません / 「イン・トゥ・ザ・ワイルド」 【映画】

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ショーン・ペン監督で、アメリカのベストセラー作品の映画化ということで、期待して見に行きましたが、自分には本レビュータイトルのようにしか観れませんでした。
文明社会を捨て自然の中で生活する(イン・トゥ・ザ・ワイルド)ことと、出自に疑問を抱いた末の自殺ごっこが混乱する結末も、心に来るものなし。
なぜこんな作品が適度に評価されているのかわかりません。きっと主人公のポジティブな姿勢が、自然の風景の中でさわやかに消化されかかっているのが、お気に召す方もいらっしゃるかもしれませんね。自分はダメでした。この程度の「冒険」は、大学卒業したいい大人がするものではありません。… 続きを読む

インド系女性英国人監督の青春ラブコメ / 「ジョージアの日記/ゆーうつでキラキラな毎日」 グリンダ・チャーダ 【映画】

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「ベッカムに恋して」で名をあげた、インド系英国人の女性監督グリンダ・チャーダの学園青春ラブ・コメディ。
年ごろのティーンエイジャーを演じるこの映画の二人は、「ベッカムに・・」にでは、キーラ・ナイトレイとパーミンダ・ナーグラの役回りとちょっと似ていたりしている。
女のコの友情物語ですね。
主人公が、その親友のドレスアップしたヘア・スタイルを褒めるのに、「キーラ・ナイトレイみたいよ」などと言うのにはちょっとニヤリとさせられた。… 続きを読む

在日華僑の現代史 / 「中華学校の子どもたち」 片岡希 【映画】

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中華街の中国人たち、つまり在日華僑の暮らしを、学校という場から映し出したドキュメンタリー。視点として、たいへん新鮮である。
子供達の日常風景を映像の中で大切に取り扱いながらしながらも、少しずつ少しずつ歴史の暗部も含めた、中華街の華僑社会の生い立ちや秘密にまで接近する。
ただし、それはあえて軽くとどめられる程度に抑えられているのが、この映画のドキュメンタリーとしての端正さではある。
ここを不満に感じてしまうとキリがないかもしれない。… 続きを読む

悪女一代記 / 「ブーリン家の姉妹」 ジャスティン・チャドウィック  【映画】

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英国王妃にして魔女として死んで行く悪女の姉と、皮肉にもそこに巻き込まれていく妹を絡めた物語。
ナタリー・ポートマンは「宮廷画家ゴヤは見た」に続く汚れ役を演じ切り、そこにスカーレット・ヨハンソンが、姉とは対照的なうぶな性格の良い妹役。このふたりの演技の持ち味の違いが、そのまま物語として成り立っている感。

微妙に味のあるベビー・フェイスっぷりが忘れられない「ラスベガスをぶっつぶせ」や「アクロス・ザ・ユニバース」のジム・スタージェスや、ナイーブな青年役がはまりすぎている「美しすぎる母」「エリザベス」のエディ・レッドメイン、「つぐない」では、クセのある女のコ役で出演していたジュノー・テンプル(ジュリアン・テンプルの娘らしいです)など、脇を固める俳優陣もなかなかのもの。… 続きを読む

カメラ技巧の贅を楽しむ小品 / 「ホウ・シャオシェンの レッド・バルーン」 【映画】

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アルベール・ラモリスの『赤い風船』に対するオマージュとして撮られた作品ということなそうな。
ストーリーはほとんどないなかで、彩られる都市風景と父と別居している子供と母親の生活が、さりげない日常描写だけで構成される。
自然光のガラス反射を利用した映像がすばらしい。
いくつか出てくるそのシーンを見るだけでも自分には価値があった。
うまい!と拍手したくなるようなカメラ技巧である。

このあっさりさを映画監督としての余裕のなせるわざと感じるか、不満に思うかはそれぞれと思う。… 続きを読む

低予算コント映画・・・ / 「サーチャーズ2.0」 【映画】

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・・・・です。
これ以上のものを期待すると損します。オチもベタベタで驚愕です。
監督、アレックス・コックスで、「レポマン」、「シドアンドナンシー」を期待していくとたいへんなことになります。
主人公の2人の娘役が、「ベッカムに恋して」「ER緊急救命室」のパーミンダ・ナーグラに似ていてかわいかった。それくらいしか持ち帰りようがありませんでした。。。

FWF評価:☆

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チベット問題を日本が語るならば・・ -「チベットチベット」 キム・スンヨン 【映画】

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◇「チベットチベット」公式サイト

 

チベット問題にかかわる日本の人たちの正義感には、いくつかの罠が含まれている・・・という話は前のエントリーにて書いた。

◇マッチ売りの少女の40光年

そのからくりをあっさりと暴露しそうになっている絶妙な映画を見た。
「チベットチベット」 監督:キム・スンヨン(金昇龍)

在日韓国人三世が、卒業旅行に旅に出る。

「日本人」として育ってきた彼は、韓国語はわからないし、「民族の誇りを持て」と教えられてきたことにも違和感を持っている。旅行から帰ってきたら、日本名の「金森太郎」として帰化するつもりでもある。そうして、民族などは声高に唱えることではない、これからは「世界市民」としての生き方をしていこう・・・。… 続きを読む

もしキューバが、イラクだったらアフガンだったら / 「モーター・サイクル・ダイアリーズ」

◇「モーターサイクル・ダイアリーズ」
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チェゲバラというのはアイドルである。
アイドルというのは、コトバの意味からして「偶像」であり、空虚なものだ。
だから、幾ら浦和レッズのゴール裏にゲバラの肖像画がゲーフラとして高々と上げられていたとしても、ビレッジバンガードに関連本とグッズのコーナーが出来ていたとしても、それは空虚である。
そして、空虚であるが故に、記号として取り扱うことが出来る。
赤い=革命→ゲバラという連想で来たのが、サッカーのゴール裏のゲバラだと思うのだが、それだったら毛沢東でもマルクスでもトロッキーでもいいと思うのだが、そこはやはりゲバラでなければならない。… 続きを読む

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