◇『ホーリーモーターズ』 レオス・カラックス
「やっちゃったな、カラックス・・・」
それがこの映画を観終わってからのため息まじりの感想。
例によって、なるべく他人の映画のレビューはなるべく目にしないようにしてから映画に出かけることにしているので、帰ってから他人のレビューをチェックしてみると、『ホーリーモーターズ』の評価が高いことに驚愕。
うーん、これがいいんですか?
ストーリーが支離滅裂とか、単なるメイク大会とか、ラストがディズニーの『カーズ』かよ!とか、無粋な突っ込みはしませんよ。
でもね、ファンタジーにしてはイマジネーションは中途半端だわ、過去の作品ではもうこれしかない!というような曲のピックアップだったのが、今さらもなんだかわ、ゴジラと弁当も笑えないわ、嫁さん・娘出演させて、挙句の果てに本人まで出演のなれあい感とか・・・もう評価のしようがないですよ、これ。
ドニ・ラバンにデビッド・ボウイで走らせろとか、画面の中に色として消えていくジュリエット・ビノシュとか、花火がさく裂するなかの絶望的なダンスを踊らせろとか、森の中から底知れぬ不気味な姿で現れてくる腹違いの妹とか出せとか、そんな贅沢は申しません。それにしても・・・。
いつも映画監督である自分が映画の主人公を突き詰めすぎるあまりに、一線を越えてしまって二人を混同してしまうカラックスだから、こういう筋はあるとは思います。演じ続ける自分ですか。なるほどそうですね、誰もが何かの役割を演じているわけですよ。
良かったところはありますよ。アコーディオンの演奏もカイリーミノーグの歌もよかったです。でも、これプロモーションビデオじゃないんだし。
あ、それから『ポンヌフの恋人』で出てきた百貨店の屋上からのシーンもなかなか。来るかな来るかなと思ったところでポンヌフ橋もしっかり登場。でも映画そのもの面白さと関係ないし。
疾走感(汚れた血)も、暴力性(ポンヌフの恋人)も、強烈な禍々しさ(ポーラX)もない。ラストシーン、実は運転手の女性も演じてるのよ!みたいなつけないでもいいオチに、たたみかけるようにしてリムジンくんたちが『カーズ』みたいなトークを繰りひろげ、エンドロール。
前作『ポーラX』(短編を挟んでおりますが長編では前作ですね)で森の中からあらわれる不気味な腹違いの妹役のカテリーナ・ゴルベワ(カラックスの嫁-故人)が、ポートレートで現れておしまい。えっと、これ失敗作ですよね?
なんだろう、みんなまた10数年も映画撮らなくなってしまうのを怖れて低評価をためらっているのですか(笑) カラックスはこんなもんじゃないですよ、本来。ジュリエット・ビノシュはなんとこの映画を評価するものか。期待して観にいった分、今年のワーストにも入りかねない勢いで×××。なんとか百貨店のシーンがまあまあよろしかったりするので、それでも少し☆×2
FWF評価:☆☆★★★