カテゴリー: 書評

坂中論文の衝撃  『在日韓国・朝鮮人論の展開』 坂中英徳

在日韓国・朝鮮人政策論の展開

1970年法務省に入省し、大阪の入国管理事務所で在日韓国人・朝鮮人をはじめとする在留外国人の審査実務を経験しながら入管行政に携わってきた若き官僚がいた。 名は坂中英徳。

その官僚が、1977年に法務省の省内の懸賞論文として書いたのが、「今後の出入国管理行政のあり方について」である。

別名「坂中論文」。

この論文は、出入国管理行政の中での在日韓国人・朝… 続きを読む

『愛国消費 -欲しいのは日本文化と日本への誇り- 』(三浦展) -「自分らしさ」が「日本探し」に転化したとき

愛国消費 欲しいのは日本文化と日本への誇り

 

2002年のワールドカップ現象をもとに日本の若年層ナショナリズムについて分析したのは『ぷちナショナリズム症候群』

その続編ともいえるのは本書、三浦展の愛国消費 欲しいのは日本文化と日本への誇りですね。2010年の動向を探っているが、ほとんど古びていない。地元志向や家族重視というところは、例のマイルドヤンキー 』(2014)につながると思われる。そういう意味でもおもしろい。

下流社会~新たな階層集団の出現~: 1 (光文社新書) ただし、もちろんこの人はマーケッタ… 続きを読む

『ナショナリズムは悪なのか』(萱野稔人) -懐疑的に語られた世界共和国の夢-

新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書 361)

自分の考えを整理する意味では面白い本だったので、少しまとめてみたいと思う。

ナショナリズム批判の研究ならば日本でも多数読めるし、共産主義の崩壊以降のナショナスリズムの圧倒的なプレゼンスについて様々な角度から分析をほどこした欧州の研究もあ… 続きを読む

『日本型排外主義―在特会・外国人参政権・東アジア地政学― 』(樋口直人)について

日本型排外主義―在特会・外国人参政権・東アジア地政学―

樋口直人氏の日本型排外主義―在特会・外国人参政権・東アジア地政学―をたいへん興味深く読んだ。

おそらく現在の日本の排外主義者(ネット右翼)の研究分析でもっともよくまとまったものだと思う。

西欧の先行する極右研究を参照しながら、特に現在流通している日本の排外主義者像を数値データを使いながら再検証… 続きを読む

ナチスは「親日的」だったのか? -日独合作映画『新しき土』と翻訳されなかった『わが闘争』

ナチスは親日的だった?

1938_Naka_yoshi_sangoku

同盟国であり、ともに敗戦国であったからという理由から、ナチスドイツに対するシンパシーのような空気が一部に存在する。

その彼らが言うには、「ナチスは親日的だった」そうである。

だが、これは欧州のディプロマシーの中のプロパガンダをナイーブに信じ込んでしまった結果に過ぎない。現実はもっと複雑であり、ナチスの思想はもっと残酷であった。

 


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トリックの中の「国家神道」【2】孤豚の如き-天皇家の没落と国学による「復権」

トリックの中の「国家神道」 【1】ヤマト王権の「国家神道」 からつづく

万葉集にて「大君は神にしませば」と歌われた天皇は天武天皇か持統天皇と推測されている。

663年の白村江の戦いで敗北した倭政権はやがてクーデターにより政権が変わる。敗戦の責任を取らないまま死んだ天智天皇が死去し、その子が後継に即位したことに対する謀反である。

例によって、このクーデター(壬申の乱)も兄弟親族同士の骨肉の争いである。神話の時代から天皇家はこのような血… 続きを読む

日米開戦はコミンテルンの謀略? 『ハル・ノートを書いた男―日米開戦外交と「雪」作戦』 -陰謀論の検証

ハル・ノートを書いた男―日米開戦外交と「雪」作戦 (文春新書)

「日米開戦はソビエトが仕組んだ」という陰謀論

「日米開戦はソビエトの陰謀だった」という「真実」がネットでは散見される。

「ハルノート」などで試しに検索するとこの手の「陰謀史観」が、その手の人達の大好きな「真実」という言葉とセットにな… 続きを読む

『関東大震災』 吉村昭 -デマの出所と第二の悲劇

関東大震災 (文春文庫)
関東大震災直後の悲惨は震災直接の被害のみならず「第二の悲劇」で増幅されている。

いわゆるデマと流言が引き起こした虐殺事件である。これには朝鮮人のみならず日本人までもが多数巻き込まれ虐殺されることになった。

さて、このデマの出所について吉村昭の推察がちょっと興味深い。

いわく、いわゆる朝鮮人が「井戸に毒をいれている」「集団で暴動を起こし… 続きを読む

『歴代天皇のカルテ』 篠田 達明

歴代天皇のカルテ (新潮新書)
歴代天皇のカルテ (新潮新書)

125代の歴代天皇の資料を紐解いて、医学的見地から天皇家をめぐる史実の背景を探らんとする書。
もちろん実際に語られているのは26代継体天皇以降。これ以前は歴史上確実に存在したといえるだけの資料が記紀以外は存在しないし、その中では皆、神話の中の人物らしく揃って長命であり、これを確かに医者の立場から語ることはできないだろう。筆者は医師である。
初代神武天皇は127歳、6代孝安天皇は137歳に崩御と日本書紀。もともと2代から9代までの天皇家は記紀にもほとんど記述がなく、まあ実在したかはあくまでも神話の中の… 続きを読む

戦争の終結はなぜ遅れたか -終戦に至る原爆投下の位置づけ-

以下、太平洋戦争の帰趨は少なくとも1944年7月に「絶対国防圏と目されたサイパンの陥落でおおよそ決まっていました。
それではなぜその戦争の終結までに1年以上もかかってしまったかについてまとめてみます。

また、結果的に原爆により、戦争の終結が早められたという、あまり認めたくはないアメリカ側の基本認識がそれなりに的を得ているということも最後にふれてあります。

 

1.天皇の終戦決断のタイミング

昭和天皇独白録 (文春文庫)

「ニューギニアのスタンレー山脈を突破(1943年9月)されてから勝利の見込みを失っていた。一度どこか

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