カテゴリー: 書評

ビジネスとしてのプロ野球とJリーグはいかに相互に影響を及ぼしあったのか -『巨人ファンはどこへ行ったのか?』を読む

 

巨人ファンはどこへ行ったのか?という本で少しインタビューを受けた。4/7発売。著者は雑誌「野球小僧」「野球太郎」の元編集でライターの菊地高弘氏。見本刷りが献本されてきたので初めて通読させてもらったのだが、これがなかなか面白かった。

以下、つらつらと本書に読んでみて考えたことを書いてみる。

この本は、「日本国民1億2000万人のうち、8000万人が我々を応援している」(長嶋茂雄の1994の発言)と言われた巨人が、気づいてみると昔ほど人気ではないし、巨人ファンというのも減っているのはどうしたわけなのか、という疑問とそれに対する様々な答えを見つけていこうとするものだ。… 続きを読む

陰謀論「田布施システム」とはなにか -三宅洋平氏が信じる日本近現代史とユダヤの陰謀論

 

日本のいちばん醜い日

「田布施システム」と三宅洋平氏

「選挙フェス」17万人を動かした新しい選挙のかたち (星海社新書) 自分は今回の参議院選挙に東京都から出馬している三宅洋平氏という人について、ほとんど何も知らなかった。今でも、ざっと略歴程度で人物を知っただけで、それ以上の知識はない。熱心なファンがいることは後から知った。

ただひとつだけ、彼が「ユダヤ陰謀論」にはまっているという話を聞いたことがあった。さらに拡張して日本にある組織があって、それが日本近現代史を牛耳ってきた悪の元凶だという説も信じているらしい、とのこと。ユダヤ陰謀論は、フリーメイソンが云々で始まるもので病的な偏執性を感じるのみで、とても合理的に考えるとついていけない類のものであるが、これにハマってしまう人間は世界中の至る所にいる。… 続きを読む

赤い安倍晋三 -「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか

「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか (ちくま新書)

 

「国体の衣を着けたる共産主義者」岸信介

「陸軍赤化論」というものがある。これを世に知らしめたのは近衛文麿だ。敗戦直前、戦争遂行の可否に悩んでいた昭和天皇に奏上して近衛曰く、この戦争は「国体の衣を着けたる共産主義者」の陰謀である、と。そしてこれに同調したのが共産主義者の「新官僚=革新官僚」だったということだ。

敗戦は遺憾ながら最早必至なりと存候。以下此の前提の下に申述候。

(中略)

翻って国内を見るに、共産革命達成のあらゆる条件、日々具備せられ行く観有之侯。即ち生活の窮乏、労働者発言権の増大、英米に対する敵慨心昂揚の反面たる親ソ気分、軍部内一味の革新運動、これに便乗する所謂新官僚の運動、

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『日本がもしアメリカ51番目の州になったら』(日米問題研究会)を読む ・・・「背後にある謎の組織」疑惑と丸山議員のヘヴン状態について

日本がもしアメリカ51番目の州になったら―属国以下から抜け出すための新日米論

丸山和也・参院議員(自民)が、2月17日の参院憲法審査会で問題発言をしたということで、野党は辞職勧告決議案を提出したとのこと。「国民の政治に対する信頼を著しく失墜させた」ということらしい。

対する丸山議員やこれを支持する方々からは、別に差別的な発言などではなく、黒人が大統領になるアメリカの政治のダイナミズムについて語ったまでのことで、ミスリードを誘う揚げ足とりだとの擁護の声もあがっている。曰く、「重箱のすみをつつくような話である」と。… 続きを読む

火あぶりにされたカボチャ -文化刺激伝播の構図とハロウィン-

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かつてサンタクロースは火あぶりの刑に処せられたことがある。

1951年フランスの古都ディジョンで刑は執行された。集められた子供たちの目の前で、異端者の審問にかけられたサンタクロースがサン=ベニーニュ・ド・ディジョン大聖堂の壮麗なゴシック建築の伽藍に吊るされ、聖職者がその罪を宣告したうえで火がつけられた。

この時期、毎年毎年クリスマスに関する議論は高まっていた。カトリックはクリスマスが神聖な降誕祭の儀式を異端化するサンタクロースという人物を告発してきた。プロテスタントもこれに追従し、この異教徒のけがれた祭典が家庭に入りこんでくるのを阻止しようとした。… 続きを読む

アジアの「親日」国家の歴史教科書を読む ・・・「マレーシアの教科書に大東亜共栄圏のおかげで独立を勝ち取ることができたと書いてある」ってホント?

D19 地球の歩き方 マレーシア ブルネイ 2015 (ガイドブック)

マレーシアというと、たいへんな「親日」国家であるそうな。実際のところそうなのでしょう。

これは1981年から20年以上在任したマハティール首相の功績が大ということである。この首相は「ルック・イースト」と呼ばれる、日本の経済発展を学ぼうという政策を打ち出したことで知られる。そのため、様々な分野で日本へ留学し、帰国後に活躍しているということらしい。そのため親日である、と。

さらには、最近の出所妖しいネットの情報によると、太平洋戦争の評価を巡っても… 続きを読む

「演歌」というイデオロギー : 『創られた「日本の心」神話 -演歌をめぐる戦後大衆音楽史』

創られた「日本の心」神話~「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史~ 光文社新書

 

伝統は捏造される

 

創られた伝統 (文化人類学叢書)

『創られた「日本の心」神話』という本書のタイトルですぐにエリック・ホブズボウムの『創られた伝統』の日本における音楽版であろうことがわかる。その『創られた伝統』は、「伝統」と言われるものの多くが、後世になって人工的に創られたものであると欧州とその他の世界における実例を様々にあげ、それがナショナリズムの構築のためのイデオロギーと強く関係があることを解き明かした書である。… 続きを読む

江戸しぐさと失敗した「文化ナショナリズム 」 -伝統と共有体験による共同体統合の可能性

 

トンデモな「江戸しぐさ」は何をめざしていたのか

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「江戸しぐさ」という、江戸時代の江戸の庶民がつくったというマナー集みたいなものがあって、それがなぜだか過度にいろんなところでもてはやされていたところ、これがどうやら歴史的には根も葉もない「ねつ造」、いわゆるトンデモではないかということが、しばらく前から話題になっていた。

暮らしうるおう江戸しぐさ偽史・大型お笑いトンデモ「江戸しぐさ」

これがついには道徳の教科書にまで掲載されていることがわかり、どうにもこれはおかしいんじゃないかということになった。… 続きを読む

『インターネットは民主主義の敵か』 フィルタリングという名の検閲と集団分極化 -反対意見は遮断するべきではない

インターネットは民主主義の敵か

インターネットがはじめて専門職やマニア以外の人間にも利用可能となり、そして拡大を始めたのは1990年代中盤のこと。よってこの「情報革命」から、まだ歴史は20年しか経過していない。本書は、インターネットが社会に何をもたらすかをユートピア的に語ることのできた第一世代の楽観が、どうやらそうでもないらしいと分かりはじめたころの著作である。本書が世に出たのは2001年はITバブルが崩壊した年。一方で翌年には日本でのインターネットの人口普及率が50%を超えている。… 続きを読む

改憲が挫折し続けてきた理由 -憲法改正と「超自我」 :柄谷行人『ネーションと美学』

定本 柄谷行人集〈4〉ネーションと美学

集団的自衛権の解釈変更の閣議決定がなされた。

世論もこの「解釈改憲」について厳しい評価を打ち出している。

閣議決定に先立つ毎日新聞の世論調査では、集団的自衛権の行使に「賛成」32%、「反対」58%。
日経新聞の調査では、「賛成」34%、「反対」50%。
最新の調査で、閣議決定当日の7月2日の共同通信の調査では、「賛成」34・6%、「反対」54・4%。

もっともこの3つの調査の数字に先立つ5月の読売と産経の調査では、7割が条件付きで容認するとの意向を示しており、必ずしも世論の風向きの予断は許さない状況だ。… 続きを読む

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