日本映画のキッチュなブレイクスルー / 「愛のむきだし」 園子温

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◇「愛のむきだし」公式サイト
桜木町のブルク13でのレイトショーにて。
ご承知のとおり、この作品の上映時間は237分、4時間の超大作。
自分としては、昨年のリバイルバル上映の「アラビアのロレンス」以来のインターミッション(途中休憩)ありの映画観賞となっております。
ちなみに、昨年公開された「沈まぬ太陽」はインターミッションありだったそうですね。
昔の映画では邦画でも大作ではけっこうこのインターミッションの映画はあったようです
(ただし「203高地」はリアルタイムで観ているのですが記憶にない。)
レイトショーだとこの映画、深夜0時からの上映で、終わった時には当然夜明け。
ブルクの劇場を出たときには白んだ空にみなとみらいを包んでいる光景。
しかしまあ、この日のこの体験はかなり鮮烈な印象でした。もちろん映画のほう。
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同時期に公開された、映画「プライド」で、ひとりだけ突き抜けた印象を残した満島ひかり。その人が出ているということで早々に注目していたのですが、幾多の人と同じく、その上映時間の長さに恐れをなして、本作はユーロスペースだったかの上映をスルーしていました。
そして、大きなメディアでは話題にはならずに、しかし、そのうち、沸々と讃辞がネットに湧き上がりはじめ、あっという間にいくつかの賞をとる結果となりました。
こういうパターンの映画は、必ず観たほうが良いということになります。

さて、この映画。
ようするにカトリック的な原罪や贖罪を巡るストーリーなわけです。
神父にして女を愛するという「罪」を犯してしまう父親に、自分の「罪」の代償かのように、むりやり告解を強制される息子。そのうちに、自らを罪を積極的に犯すことにより贖罪の羊となることをこの息子は行うことになる。
自ら罪を引き受けて、贖罪のために犠牲になるのは、父のためだけではない。
母親は「マリア様のような女性と結ばれなさい」という言葉を残してすでに死んでいる。
息子は、その「マリア」のような存在を追い求めるのだが、それは罪を犯すことによってしか出会えないと信じている。
それは、罪を犯して贖罪の羊として社会の中で汚れていくことが、逆に聖なる存在に救済されるという逆説を、父からの精神的な迫害を受けるうちに刻みこまれてしまったことだ。
そして、ある日、彼は汚れに汚れた姿を晒す中で、その「マリア」に出会うことになる・・・。
ここまでが映画の一時間くらいですか。
こういう風に、あらすじをテーマの骨子だけ綴っていくと、これまた宗教映画の系譜のように純粋に思えてくるのでありますが、この映画がひたすら度肝を抜くのは、ともすれば無理にわからないカトリックの世界観を表面上たどっていこうとする日本映画の悪い手癖から完全に脱出しているところです。
だって、原罪が、ヒーローもの映画のようなアクションでコミカルに描かれる盗撮によって表象されていたりするんですよ。しかも、それがとてつもなくチープな日本の風俗やバラエティ感覚に支えられながら、延々と強いテンションで持続するわけです。
だいたい、究極の堕落が、主人公ユウが盗撮合戦での負けた罰ゲームの女装なんですから。しかも、その女装姿の主人公の名前が「サソリ」。
え、梶芽衣子のサソリですか、それはどういうことなんでしょう。。。
てか、これは信仰をバカにしてんのか?という話ですよね、フツー(笑)
この妙なテンションは全編を通じて延々と拡張されながら、それが暴走を続けていく。映画のテンションがとめどもなく煮えたぎっている。
満島ひかりの夜明けの海岸での長回しの長舌のセリフ、新約聖書コリント使徒への手紙第十三章、これは息を呑む圧巻。

父親によって原罪を自ら引き受ける存在に陥ったユウに自己同一性を見出した、安藤サクラ演じるコイケ。
新興宗教のモンスター的な存在にまで自己膨張したコイケの狂気が、そのユウに向けて発現されていく。
もうこのへんからはかなりストーリーは荒れていくのだが、それでも主人公役の西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラの3人の演技的な強度にひたすら幻惑されてしまい、荒唐無稽な結末であったとしても、自分は何も文句が言えない。
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こういう日本映画のブレイク・スルーの方法もあるのではないかといたく感心した映画である。
いやはや、圧倒されました。
この4時間の映画では、ひたすらラヴェルの『ボレロ』と、ゆらゆら帝国の『空洞です』が延々と聴こえてくる。このピックアップも、この映画らしいキッチュと緩さと恐ろしいテンションの持続を支えている。これもまたよし。
安藤サクラのコイケ役の存在が、主人公にとって超越的な自分のコピー(超自我)という設定について、ひとくさり物語分析みたいなこともやりたいところだが、もう一回DVDで観てからのほうが良いと思うので、これはまたそのうち改めて。
まあ大変な作品ですよ。
FWF評価:☆☆☆☆☆

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1コメント

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  1. 「愛のむきだし」「川の底からこんにちは」満島ひかりDAY

    なんか連チャンで満島ひかりの日になっちゃったので感想書きます。
    愛のむきだし
    ストーリーを書こうと思ったんだけど、書くとその無茶苦茶っぷりが際立ってしまい・・・
    両親の愛を知らない3人の若者、一人は父の愛を得ようと盗撮に走り変態と呼ばれ、一人は

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