カテゴリー: 書評

『ウルトラマンが泣いている -円谷プロの失敗-』 円谷英明

ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書)
ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書) 』円谷英明
最初に整理すると、著者は円谷プロ創設者円谷英二の孫。
円谷プロは最近まで同族経営がされていて、著者は2004年に就任した6代目。
もともと東宝との関係が近かった円谷英二が、凝りに凝りまくる特撮技術でひとつの時代をつくったものの、最初から会社は赤字続き。
この本にはいくつか、なるほど・・・と永年の疑問を氷解させることが書いてある。
もともと自分はウルトラマンシリーズは、初代ウルトラマンとセブンまでしか興味がない。「帰ってきたウルトラマン」になると物語のクオリティが低すぎてどうにもならない。これは再放送を見ていた小学生の時から一貫している。… 続きを読む

『終わらないオウム』 -ポストオウム/オウム的カルトの行方 

終わらないオウム
終わらないオウム 』上裕史浩・鈴木邦男・徐裕行
オウム真理教事件の村井刺殺犯 徐裕行と、その凶行のターゲットの一人だったという上裕史浩との対談を中心にした一冊。序文での鈴木邦男は本書を「奇跡の書」と称する。
義憤に駆られてオウム真理教の幹部を殺そうと思いついたという徐。麻布のオウム真理教の支部の前で、居並ぶマスコミにまぎれこみながら、犯行に使われた包丁を隠しもっていたとき、そのターゲットとしていたのは対談の相手である上裕でもあったという。むしろ「上裕さんを狙っていた」とのこと。その二人の対談だから緊迫する。村井刺殺についても、「素直に謝るつもりはない」、と断言する。… 続きを読む

『データでわかる2030年の日本』 三浦展

データでわかる2030年の日本
データでわかる2030年の日本

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)90年代にパルコが出していたマーケティング調査担当者やプランナー御用達の雑誌『アクロス』

自分もこれにはかなり影響されました。定量調査の切り口も手際よろしく、渋谷の定点通行客調査とかも面白かった。そのアクロスの編集長だったのが三浦展氏。アクロスで培った手法は、議論を呼んだ『下流社会』に引き継がれてもいます。その三浦展氏の新著。今回もお世話になります。

・日本の人口は戦中に『進め一億火の玉だ』と言っていた頃の一億人とは植民地を含めた数で、実際に1億に到達したのは1967年。

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『ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム』 溝口敦・荒井香織 編著

ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム 大手出版社が沈黙しつづける盗用・剽窃問題の真相 (宝島NonfictionBooks)

ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム 大手出版社が沈黙しつづける盗用・剽窃問題の真相 (宝島NonfictionBooks)

政治家 橋下徹は、なんともはやいつも困惑させられる存在である。
だからいつもケースバイケースで評価していくしかない。もっとも政治家なんてそんなもんだとも思うのだが。
その橋下にまつわる騒動で、唯一これは完全な正論を言っていると評価したのが、被差別部落問題に対する対応。最初から最後まで非の打ちどころがなく、かつ積極的な対応だったと思う。… 続きを読む

『被差別の食卓 』 上原善広

被差別の食卓 上原善広
いつだったか、大阪のキタのお初天神通りのあたりを出張仕事の帰りにぶらぶらしていると、「あぶらかすうどん」という文字が目に入った。

この「あぶらかす」というのが初めて目にする言葉であったので、物珍しく思い、今時なヘタウマ筆文字で書かれた看板のその店に入ってみた。

うどんにのっているカリカリとした油の風味がする味の濃いトッピングが、そのあぶらかすというものらしく、実際それはとても美味しかった。

この「あぶらかす」という食べ物についての隠された(・・・といっても俺も含めて皆知らないというだけなのだが)物語を知ったのは、この書籍を読んだ最近のことになる。… 続きを読む

『神道はなぜ教えがないのか』 島田 裕巳 -開祖も宗祖も教義も救済もない宗教-

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神道はなぜ教えがないのか』 島田 裕巳

日本人の固有の民族宗教は神道となるわけなのだが、これほど曖昧模糊とした「宗教」というのはなんなのだろう?というのが本書。特に著者からの回答もなく、サジェスチョンめいたものもない。

実際、神道をキリスト教・イスラム教・仏教というような体系的な宗教と比較すると、もうなんにもないわけで、「開祖もない、宗祖もない、教義もない」ということになる。

ただ、これ自体は現代に流通する「世界宗教」と比較するからそうなるわけで、例えばゾロアスター教やケルトの信仰のようなものだとやはりないないづくしの宗教になる。それぞれ、多神教の宗教としてニューカマーの世界宗教の壮大な体系からは否定されつつも、それらと共存したり、形を変えてそれらの世界宗教に地域レベルで溶け込んでいるところも特徴。… 続きを読む

『田中角栄 -戦後日本の悲しき自画像』 早野 透 -周恩来にハッタリかました田中角栄-

田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)
田中角栄 – 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)

本書、日中国交回復の政治交渉の最中の周恩来と田中角栄のやりとりで面白かったところが以下のくだり。

「周恩来は、日本に殺された中国人は1,100万人であると言って、どこどこでどれだけ中国人が殺されたかを言うんだ。大平(外相)も二階堂(官房長官)もたまげて聞いていたね。私は、死んだ子を数えてもしょうがないと口に出しそうになった。しかし田中角栄も政治家だ。黙っていた。

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『陰謀史観』 秦郁彦 -疑心暗鬼の共鳴-

陰謀史観(新潮新書)
陰謀史観(新潮新書) 』秦郁彦

身の周りに出来事の連続性があって、それがどうも偶然とは思えない。

そのとき、どこかの誰かによるひそかな企てなのではないかと疑えてしまう。たとえばユダヤ人、フリーメーソン、ナチ、共産主義者、さらには宇宙人等々。

それが、精神医学的な被害妄想と退けられるのではなく、歴史の修正を迫ることがある。それを「陰謀史観」という。

その「陰謀史観」の中で、日本近代史に実際に影響を及ぼしたものが本書にてピックアップされている。… 続きを読む

『蝦夷の地と古代国家』 -東北の多元的な民族事情-

蝦夷の地と古代国家 (日本史リブレット)
古代王権によってまつろわぬ民とされてきたのは、蝦夷・熊襲・隼人。これにあわせて南島の人々は、当時の王権にとっては異文化集団のマイノリティ。
 しかしそれぞれ化外の人とされて、敵対視されて異質なものと扱われてきた。このへんは中国の華夷思想の影響が強い。それぞれ政治的なイデオロギーに塗りつぶされた、王権サイドからの記録しかない。
といっても上代の歴史すらもプロパガンダもどきの記紀と海外からの不確かな記録にしか頼れない。… 続きを読む

『黄禍論と日本人 – 欧米は何を嘲笑し、恐れたのか』

黄禍論と日本人 - 欧米は何を嘲笑し、恐れたのか (中公新書)
昭和天皇独白録の述懐の中でも有名なもののひとつに、太平洋戦争の理由を述べたものがある。

いわく、太平洋戦争の遠因は、それからさかのぼる20数年前の第一次世界大戦終了後のパリ講和会議で、日本が提出した人種差別撤廃条約のアメリカとイギリスによる否決したことうんぬん。

当時の情勢を振り返る。ドイツのヴィルヘルム2世は、日清戦争の勝利の前後から欧州の権益を損ねるアジア人種は脅威であると、いわゆる「黄禍論」を打ち出す。ちょうど中国のナショナリズムが萌芽期に入ったころ。… 続きを読む

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