-->『引き裂かれた女』 クロード・シャブロル - Football is the weapon of the future フットボールは未来の兵器である | 清 義明

『引き裂かれた女』 クロード・シャブロル

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『引き裂かれた女』公式サイト
実際にあった事件を下敷きにしている作品なのですが、この監督の悪意みたいなものが、すばらしく見事に映画の中に定着していて、トリックアートのように心理ドラマを楽しむことができます。
大人の作品ですが、裏読みも必要もなく、キッチリうまく出来あがった作品で感心しました。これは良作です!
お天気キャスターの女は、母親とふたりぐらし。ある日、高名な作家である男と、書店を営む母親を通じて出会い、情事を重ねる。
一方、金持ちのどら息子である青年に熱烈な求愛をうけるが、どうしてもこれには応じることができない。
しかしある日、男が連れて行ったサロンでの出来事をきっかけに、女はあっさりと捨てられてしまう。
失恋の痛手から、青年と結婚に至るが、この青年はかつてとある事件をおこしていたことがあった。
サロンでの出来事を聞いた青年は激情し、作家のパーティーに向かう・・・。
ようするに遊びで付き合っていた若い女を、乱交サロンに落としてから捨てちゃったオヤジがまずいて、そこにもともと精神的に不安定で過去に前歴のあるドラ息子が復讐に向かうという話なんですけど、それを書くと映画として身も蓋もない。書いちゃいますけど(笑)

この二人の真ん中にいるのが、まったくもって天真爛漫にみえる女のコなわけです。
豊満であどけない顔立ちが、また本来ならダークなお話に、なんとも映えてみえるんですよ。
そして映画は過剰にならず全くもって、たんたんと話が進んでいく。これは、この人が老齢でベテランである余裕なんでしょうか。いやはや、ブラックであるのに、なんですかこの落ち着きっぷりは(笑)
昼ドラとかでありそうなテーマではありますが、ちょっとただ事ではない余裕な映画づくりに脱帽であります。

金持ちのドラ息子を演じていたブノワ・マジメルの役者っぷりが印象に残りました。
『いのちの戦場 -アルジェリア1959-』での感情むき出しに演技を憶えていますが、この作品もなかなかです。


シネマ・ジャック&ベティのクロード・シャプロル特集にて。
『悪の華』も観ておりますが、もっと観ておけばよかったと後悔。
FWF評価:☆☆☆☆★

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