
2020年のライター仕事、個人的ベスト3
以下、全リスト
『巨人ファンはどこへ行ったのか?』という本で少しインタビューを受けた。4/7発売。著者は雑誌「野球小僧」「野球太郎」の元編集でライターの菊地高弘氏。見本刷りが献本されてきたので初めて通読させてもらったのだが、これがなかなか面白かった。
以下、つらつらと本書に読んでみて考えたことを書いてみる。
この本は、「日本国民1億2000万人のうち、8000万人が我々を応援している」(長嶋茂雄の1994の発言)と言われた巨人が、気づいてみると昔ほど人気ではないし、巨人ファンというのも減っているのはどうしたわけなのか、という疑問とそれに対する様々な答えを見つけていこうとするものだ。… 続きを読む
自分は今回の参議院選挙に東京都から出馬している三宅洋平氏という人について、ほとんど何も知らなかった。今でも、ざっと略歴程度で人物を知っただけで、それ以上の知識はない。熱心なファンがいることは後から知った。
ただひとつだけ、彼が「ユダヤ陰謀論」にはまっているという話を聞いたことがあった。さらに拡張して日本にある組織があって、それが日本近現代史を牛耳ってきた悪の元凶だという説も信じているらしい、とのこと。ユダヤ陰謀論は、フリーメイソンが云々で始まるもので病的な偏執性を感じるのみで、とても合理的に考えるとついていけない類のものであるが、これにハマってしまう人間は世界中の至る所にいる。… 続きを読む
「陸軍赤化論」というものがある。これを世に知らしめたのは近衛文麿だ。敗戦直前、戦争遂行の可否に悩んでいた昭和天皇に奏上して近衛曰く、この戦争は「国体の衣を着けたる共産主義者」の陰謀である、と。そしてこれに同調したのが共産主義者の「新官僚=革新官僚」だったということだ。
… 続きを読む敗戦は遺憾ながら最早必至なりと存候。以下此の前提の下に申述候。
(中略)
翻って国内を見るに、共産革命達成のあらゆる条件、日々具備せられ行く観有之侯。即ち生活の窮乏、労働者発言権の増大、英米に対する敵慨心昂揚の反面たる親ソ気分、軍部内一味の革新運動、これに便乗する所謂新官僚の運動、
丸山和也・参院議員(自民)が、2月17日の参院憲法審査会で問題発言をしたということで、野党は辞職勧告決議案を提出したとのこと。「国民の政治に対する信頼を著しく失墜させた」ということらしい。
対する丸山議員やこれを支持する方々からは、別に差別的な発言などではなく、黒人が大統領になるアメリカの政治のダイナミズムについて語ったまでのことで、ミスリードを誘う揚げ足とりだとの擁護の声もあがっている。曰く、「重箱のすみをつつくような話である」と。… 続きを読む
かつてサンタクロースは火あぶりの刑に処せられたことがある。
1951年フランスの古都ディジョンで刑は執行された。集められた子供たちの目の前で、異端者の審問にかけられたサンタクロースがサン=ベニーニュ・ド・ディジョン大聖堂の壮麗なゴシック建築の伽藍に吊るされ、聖職者がその罪を宣告したうえで火がつけられた。
この時期、毎年毎年クリスマスに関する議論は高まっていた。カトリックはクリスマスが神聖な降誕祭の儀式を異端化するサンタクロースという人物を告発してきた。プロテスタントもこれに追従し、この異教徒のけがれた祭典が家庭に入りこんでくるのを阻止しようとした。… 続きを読む
マレーシアというと、たいへんな「親日」国家であるそうな。実際のところそうなのでしょう。
これは1981年から20年以上在任したマハティール首相の功績が大ということである。この首相は「ルック・イースト」と呼ばれる、日本の経済発展を学ぼうという政策を打ち出したことで知られる。そのため、様々な分野で日本へ留学し、帰国後に活躍しているということらしい。そのため親日である、と。
さらには、最近の出所妖しいネットの情報によると、太平洋戦争の評価を巡っても… 続きを読む
『創られた「日本の心」神話』という本書のタイトルですぐにエリック・ホブズボウムの『創られた伝統』の日本における音楽版であろうことがわかる。その『創られた伝統』は、「伝統」と言われるものの多くが、後世になって人工的に創られたものであると欧州とその他の世界における実例を様々にあげ、それがナショナリズムの構築のためのイデオロギーと強く関係があることを解き明かした書である。… 続きを読む
「江戸しぐさ」という、江戸時代の江戸の庶民がつくったというマナー集みたいなものがあって、それがなぜだか過度にいろんなところでもてはやされていたところ、これがどうやら歴史的には根も葉もない「ねつ造」、いわゆるトンデモではないかということが、しばらく前から話題になっていた。
これがついには道徳の教科書にまで掲載されていることがわかり、どうにもこれはおかしいんじゃないかということになった。… 続きを読む
インターネットがはじめて専門職やマニア以外の人間にも利用可能となり、そして拡大を始めたのは1990年代中盤のこと。よってこの「情報革命」から、まだ歴史は20年しか経過していない。本書は、インターネットが社会に何をもたらすかをユートピア的に語ることのできた第一世代の楽観が、どうやらそうでもないらしいと分かりはじめたころの著作である。本書が世に出たのは2001年はITバブルが崩壊した年。一方で翌年には日本でのインターネットの人口普及率が50%を超えている。… 続きを読む