カテゴリー: 書評

幕末動乱と中国マーケット 【1】太平洋の時代 / 「黒船前後・志士と経済」 服部之総

14293516.jpg
もともと日本を開国したのはアメリカであったはずである。
ところが、実際に通商条約が各国間で次々と結ばれると、貿易はイギリスにほぼ独占されていた。このことが、明治維新と日露戦争を経て対立関係となる日米関係を読み解くひとつの材料となるのである。
以下、服部之総の「黒船前後・志士と経済」をテキストに用いて整理してみる。
【1】太平洋の時代

 1845年 カリフォルニア共和国独立
 1846年 メキシコ戦争
 1848年 

続きを読む

「小虫譜」 吉本隆明

吉本隆明では、当然ながら初期の詩編が好きではあるけれども、このへんのも好きだ。
吉本の詩で好きなものをひとつだけあげろと言われたら、これをあげることになるでしょう。
この詩は、全集などには掲載されていないのではないかな(未確認)。
「詩の読解」鮎川信夫/吉本隆明 より。
鮎川信夫の選ぶ、現代詩アンソロジー十編のうちのひとつ。
鮎川は黒田善夫の「空想のゲリラ」をあげていたり、吉本隆明は長谷川龍生の「理髪店にて」などをあげている。… 続きを読む

「天皇陛下にささぐる言葉」 坂口安吾 -人の家の世継の話

575671.jpg
(本文は、皇太子夫妻に跡継ぎが未だ授からぬところから巻き起こった、皇室典範について議論も含む、一連の騒動?を前にして書いたもの。初出、2006年02月09日)

人の家の世継ぎの話になんでこんなにみんな一生懸命なんだろう。

そして、よくよく考えてみれば、これほど卑しい話はない。

 

 私は天皇制についても、きわめて日本的な(したがって独創的な)政治的な作品を見るのである。天皇制は天皇によって生み出されたわけではない。

続きを読む

帝国陸軍派閥抗争の理論的背景 / 「帝国陸軍の“改革と抵抗”」 黒野耐

◇「帝国陸軍の“改革と抵抗”」
4061498592.jpg
「帝国陸軍の“改革と抵抗”」は、日本陸軍のいわば国防思想の変遷を3人の人間(桂太郎・宇垣一成・石原莞爾)の「改革」から論じようとした本なのだが、なんだか知らないけど、この「改革」とやらを、小泉「改革」とムキになって重ね合わせようとして無理のある本だった。最近の新書ブームとやらで、こういうロクでもない本増えているのだろうか。
ただし、日本の国防思想の変転をすっきり3人の軸にまとめているところはわかりやすくはある。… 続きを読む

天皇と東条英機の距離 / 「日本海軍の終戦工作」 纐纈厚

◇日本海軍の終戦工作―アジア太平洋戦争の再検証 纐纈厚
41GZS66MBRL.jpg
日中戦争から第二次世界大戦に至るまでの外交政治政策を常にリードしてきたのが陸軍で苦渋の決断で太平洋戦争に突入した、というこれまでの通説を検証した書。
政治的なパワーゲームの中で、海軍が積極的に戦争の泥沼を拡大させてしまったという面を取り上げつつ、東条内閣の打倒工作の実状や終戦工作についてひととおりの知識を与えてくれる。
自分が認識を改められたのは、実は東条英機は天皇の肝入りにて任命され、そしてそれゆえに更迭することが難しかったという事実のくだりだ。… 続きを読む

現在形の敗因 / 日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 山本七平

nihonwa.jpg

陸軍専任嘱託として太平洋戦争のフィリピンに赴任した技術者が、その捕虜体験の中で書き綴った「虜人日記
」を題材に、山本七平が語る日本論。
4480088830.jpg
日本がなぜ「敗れたのか」をこの書は取り扱ったのではない、日本が「なぜ敗れるのか」という現在形のタイトルがつけられていることに注意するべきである。
本書では、この技術者が目のあたりにした戦場体験をバックグラウンドとして、日本の国家体制の政治と軍事に関して、次のような敗因が分析される。… 続きを読む

敗戦までの「論理」を問い直す / 「戦争の日本近現代史」 加藤 陽子

4143ZFNQ57L__SL500_.jpg
◇戦争の日本近現代史―東大式レッスン!征韓論から太平洋戦争まで

日清戦争以降の日本が、安全保障という理由から大陸に進出して、そしてそこから泥沼式に戦争が占領地を拡大し、そしてその占領地が摩擦を呼び、という繰り返しで泥沼に陥ったという流れは、一般的な理解だろう。

本書の卓越は、歴史というのが断絶した出来事の累積なのであり、そしてその中に「深いところで突き動かした力」があるという認識であり、そこから、幾たびも語られたであろう日本の近現代史を検証するところである。… 続きを読む

投資の対象だった日露戦争 / 「日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記」 田端則重

日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記―(新潮新書)

日露戦争は、「第0次世界大戦」とまでいわれるほど、これまでの戦争スタイルとは違ったものであった。それは戦術や火器の進歩、さらには桁違いの死傷者数などはこれまでになかったものであったが、それとともに大きな違いがあったのは戦費である。

日本が日露戦争で使用した戦費総額は17億円。この当時の日本の国家予算は2億円程度であり、その不足分はすべて外債によってまかなわれている。

日本は日本は戦費の融資を同盟国イギリスに頼んだがこれは断られており、結局は金融市場にて調達するしかなかったのである。… 続きを読む

アメリカの2つのエディプス神話の闇の奥 / 「スターウォーズ」と「地獄の黙示録」

sa.jpg

 

THX-1138 ディレクターズカット (字幕版)「地獄の黙示録」は、当初ジョージ・ルーカス監督のもとで撮られる予定だった。

当時、「THX-1138」という悪評紛々たるSF前衛映画をつくったばかりのルーカスは、その後始末に追われていた。ギャラの取り分で揉めている間に、所属する映画会社ゾアトロープの社長であるコッポラは、勝手に予算を集めて、フィリピンでその映画の撮影を開始してしまった。

憤懣やるかたないルーカスは、これまで考えていたその映画のコンセプトをあきらめず、… 続きを読む

腐って発酵したリンゴは凍った手を温めてくれた / 吾妻ひでお「失踪日記」

◇「失踪日記」吾妻ひでお
Sissou.jpg
以前、鴨川つばめがどのようになってしまったかを、その本人のインタビューで知ったときには大変な衝撃を受けた。
鴨川つばめの場合、あの名作「マカロニほうれん荘」の最後は明らかに作品そのものもおいつめられていて、リアルタイムの連載を追っていた小坊の自分でさえ、そのただならぬ気配に連載の終わりを察知することができた。
その後にマカロニほうれん荘は「2」としてよみがえることになるが、その筆致は最後まで回復することがなく、そして鴨川つばめは本当にいなくなってしまった。… 続きを読む

Top