とあるアメリカの保守系のシンクタンクの機関紙に出たひとつの論文を増補したもの。
論文のタイトルは原題は『力と弱さ』。ここにおける「力」とはアメリカのことで、「弱さ」とは欧州のこと。
筆者はレーガン時代の国務省のスタッフで、国際平和カーネギー基金の研究員。この論文はその内容から、かなりの衝撃を欧州に与えた由。
いわく、もはや「欧米」という言葉が現実的でないほど、アメリカと欧州の政治的な方向性は隔絶してしまっている。
それはそもそも欧州が軍事力的に弱いからであって、そのカント的でポストモダンな国際協調主義は単に軍事力を背景に出来ないからとる弱者の思想である。
アメリカのユニラテラリズム(単独行動主義)は、西部劇のゲーリー・クーパーの保安官のようにふるまうが、実際にそれで世界は進歩してきたとアメリカ人は一般的に確信している。
一方、高邁な理想にかかわらず欧州は内部の問題を抱えすぎており、衰退する一方であり、その理想主義的なカント流の永遠平和の思想は、単に国力が弱い弱者の戦略であって、「万人の万人への戦い」というホッブス流のアメリカの現実主義とは相いれない。欧州とアメリカは相反する方向に行くだろう。
アメリカは国際連合や世界法廷といった外部の仲介による「理想的・法的」解決を必ずしも信じていないので、結局「方程式における力の項」つまり軍事力を行使し続けていくだろう・・・・。
なるへそー・・・ここまで開き直っているんだなあという感じです。
相補するデータとして、現在の世界の軍事費の支出の半分はアメリカのもの。
アメリカと欧州全体の経済規模は2000年代前半にはほぼ同じだが、2050年には欧州はアメリカの半分程度になることが予測されている。
アメリカの年齢の平均値は35.5歳で2050年には37.7歳と予測されるが、欧州はなんと2050年には52.7歳となる。この高齢化社会の財政負担は国家財政を圧迫するだろうことは明白。
ちなみにこのへんの事情は日本と同じ。
なお、なんでアメリカは高齢化が進まないかといえば、答えは簡単。その移民政策のため。こういうところは確かにアメリカはうまい。
・・・・とはいうものの、ここまで本当にアメリカ独り勝ちが永遠に続くのかといえば、そんなことはないというのは同国の財政事情を見ればわかるとおりなのですが、そういうところを気をつけて読んでいけば、なんとなく参考にはなります。
なお、この論文が出た翌年にアメリカはイラク戦争を開始。もちろんほぼ単独行動主義で欧州の根強い慎重論をふりきっての戦争でした。
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