帝国陸軍派閥抗争の理論的背景 / 「帝国陸軍の“改革と抵抗”」 黒野耐

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◇「帝国陸軍の“改革と抵抗”」
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「帝国陸軍の“改革と抵抗”」は、日本陸軍のいわば国防思想の変遷を3人の人間(桂太郎・宇垣一成・石原莞爾)の「改革」から論じようとした本なのだが、なんだか知らないけど、この「改革」とやらを、小泉「改革」とムキになって重ね合わせようとして無理のある本だった。最近の新書ブームとやらで、こういうロクでもない本増えているのだろうか。
ただし、日本の国防思想の変転をすっきり3人の軸にまとめているところはわかりやすくはある。
すなわち、

(1)主権線論(専守防衛)から利益線論(外国への派兵による積極的防衛)への変転
(2)第一次大戦以後の経済をも統制する国家総力戦体制への変転
(3)対米戦争への体制のシフト

このへんは、コレと一緒に読むとわかりやすいかもしれない。
ただし、これらは特に思想的にすみやかにこのような思想がとられてきたかというと、決してそうではなく、基本的には人事抗争と派閥争いが、これらの方向性を決着づけてきたというところも多々ある。基本的に、日本はいつでもこうだ。
ニ・ニ六事件も、基本的には単なる陸軍内の派閥抗争とみなしてしまっても無理はないくらいだ。これに過剰な思い入れをこめて「美」を見いだししてしまった三島はあまりにも無理がありすぎるし、幼い。
◇「帝国陸軍の“改革と抵抗”」
初出:2006年12月04日

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