◇「ミルク」公式サイト
メキシコの山中で、土地をもたないために貧困に喘ぐ少数民族の自立のために、今も戦っているサパティスタのマルコス副司令官は、「サンフランシスコにもいたことがあるゲイである」という噂を、彼を揶揄して評判を落とすために新聞で流されたときに、次のようなコメントを出した。
『私が同性愛者であるかどうかについて』
マルコスは、サンフランシスコのゲイである。
そして、南アフリカの黒人であり、 ヨーロッパのアジア人であり、 スペインの無政府主義者、
イスラエルのパレスチナ人、 観光地の先住民である。
貧民街の暴力団員、 由緒正しい大学のロックミュージシャン、 ドイツのユダヤ人、
国防省の中の人権擁護者、 政治的な政党の中のフェミニスト、 冷戦後の共産主義者、
ボスニアの平和主義者、 ギャラリーも地位もない芸術家、
メキシコのあらゆる都市や場所に暮らす、土曜日の夜を過ごす家庭の主婦、
20世紀の終わりにおけるメキシコのゲリラ、 御用組合の中でストライキをする者、
フェミニズム運動の中のセクシスト、 午後10時に地下鉄の駅に1人でいる女性、
土地のない農民、 地下出版社の編集者、 失業した労働者、 オフィスのない医者、
流行にはずれた学生、 ネオリベラリズムに反対する反対派の人、 著書や読者を持たない作家、
そしてもちろん、メキシコの南東部のサパティスタ。
言い換えるなら、 マルコスは、この世にどこにでもいるような人間である。
マルコスは、 受け入れられず、抑圧され、単に利用されている、すべてのマイノリティーであり、
抵抗し続ける少数派だ。 そしてこう言っている。
「もう、たくさんだ!」
barairo.netより
以上のような見方でこの映画を観るのならば、いろいろな世界が広がるだろう。
それは、まだニューヨークにいたシャイでカミングアウトしていないミルクが、「変わらなくちゃならない」と思い立ってからわずか8年で、はじめてのゲイの政治進出を果たしたように。
非常に元気が出てくる映画である。肯定的な映画であり、そして何をも飾らない。
こういう率直さが好きです。
さて、以上がハーヴェイ・ミルクの自伝としての価値。
映画としてならば、非常に丁寧に自然光の淡い光やライティングの美しさを存分に発揮しながら、ショーン・ペンの抜群の演技が大変印象深く残る映画とまずは言わせてください。
ミルクの撃ち殺される直前のシーンの、コマ落としの画像が微妙に緩やかに流れていくところなどは職人芸ですね。素晴らしいです。
道端に落ちた金色のホイッスルが街灯に照らされていて、そこに映る映像、そしてそれを拾い上げてシーンが切れるところなど、うーん渋いです、かっこいいです。
唯一不満なのは、結局ミルクを殺してしまう男の心理描写が粗雑だったこと。
やはり同じ少数派であるアイルランド系カソリックのコミュニティ出身の男と、キリスト教原理主義や警察との癒着シーンが、なんだかうまくかみ合わない。
あれあれ?そんなに撃ち殺すような動機はどこにあるの?というまま終わっていくのだが、これはその後に史実を勉強しなさいというところなのか。
まあ、ご愛敬かな。
最初から最後まで、ゲイのキスシーンやカラミのシーンが続くので、そこで辟易としてしまう人もいるだろうけど、オレ、最後には慣れてきた(笑)
映画の力ですね!GOOD!
FWF評価:☆☆☆☆
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