◇「スーパー!」公式サイト
まあ夏休みですから仕方ないんですが、シネコンの上映ラインナップに、どうにもこうにも好みの映画が見当たらず、困ったときのシネマリンとニューテアトル(ともに横浜伊勢佐木町の昔ながらの単館)のプログラムをチェックすると、おっと!エレン・ペイジが出ている映画があるではないか!
ざっと映画の紹介文を読んで、コミックフリークがつくったコメディ映画・・・くらいの予想で観にいきました。
そしたらですね、これがなんとも始末に困る映画でした(笑)
最初に言っておきます。この映画はOKです。なかなかによく出来た映画でしたよ。
だけど、全く予想に反してこの映画、宗教とコミックにハマった孤独な男の狂気を、あっけらからんとコミカルに描いた作品だったわけです。
筋立ては、ようするに『タクシードライバー』ですよ。
コミックと宗教を起爆装置にしたトラヴィスの物語ですね。
バーナード・ハーマンのモーダルなジャズが流れる映画でしたけれど、こちらはひたすら安いロック。
狂気の主人公が鏡の前でナルシズム丸出しでつぶやくのは、『タクシードライバー』ならば”You talikn’ to me?”
こちらの作品は、日本で言うなら戦隊モノのヒーローが言うようなセリフ。
「シャラップ・クライム」
そんな違いはあれど、麻薬に蝕まれてセラピーに通うような女を妻にはしたものの逃げられてしまい、そこから子供の宗教番組のヒーローものに目覚めて、「正義」のために狂った行動を繰り返す。
いやはや、これがまた本当に怖いんですよ、この人。だって、このヒーローの必殺のアイテムはドでかいスパナなんですから。
ちなみに、もうひとつ『タクシードライバー』で主人公のトラヴィスの仕込み武器を彷彿させるのがありましたねえ。飛び出す武器は、男のロマンですね(笑)
ひとひねりしてあるのが、エレン・ペイジのこれまたマッドなオタク女。
これがまた輪をかけたキチガイなわけですが、まったくこの女優さんは役を選ばない人ですね(笑)
ただ、『ローラーガールズダイアリー』もそうでしたが、このへんの汚れ役っぽいのは非常に相性が良さそうです。
麻薬やセックスという欲望から、自分の聖なる女性を一方的思いから「救済」しようとする。どう考えてもキチガイなのが、どういうわけか一転して「ヒーロー」に転化する。
こんなことはありえない話です、本来。危険な話です。
コミックの擬音を臆面なく画面から飛び出させて、能天気なガールズロックが流れ、そして貧弱な体系なためお手製のヒーローコスチュームのコスプレがだぶついているエレン・ペイジ。
なんなんですかね、このヘンなキッチュ感(笑)
ラストシーンも、ひとりで部屋にいる主人公のところに手紙が来るところも『タクシードライバー』ですね。なんだか強引なんですが、映画を観ている途中から、これは『タクシードライバー』なんだろうなとわかってきた自分からすれば、全く違和感ありませんでした(笑)
そんなわけで、90分がそれなりに楽しめたこの作品。
リヴ・タイラーもケヴィン・ベーコンもよろしく、まあなんというか、駄菓子屋で10円のお菓子の当たりをひいたような、ちょっぴりのラッキー感を得たわけです。
FWF評価:☆☆☆★★
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