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美しく麗しきひと夏の恋 / 「アデュー・フィリピーヌ」 ジャック・ロジェ

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◇「アデュー・フィリピーヌ」

ひと夏のバカンスのなかで繰り広げられる三角関係の恋愛をつづる美しく麗しい青春劇。
ナンパで知り合った二枚目の男をめぐって、美少女のバカンスの恋が、夏のコルシカ島の太陽の光の下で繰り広げられる幸福な物語。

すばらしく良く出来た映画で、この映画が日本で未公開であったとは少し信じられない。
カイエ・ドゥ・シネマ誌の65年の戦後20年のベスト10に10位でランク・インしているということだが、同時にこの作品の商業的な失敗により、この監督は10年近く映画を撮れていない。
え!なんでこの映画が失敗なの?と思わざるを得ないのだが、あまりにもオーソドックスな恋愛模様を徹底的にハッピーに描くところが、退屈な人には退屈なのでしょう。
そのままポスターにして飾りたいようなシーンが続出、とにかく美しく、そして楽しい。
自分は大好きです、この映画。

タイトルの「アデュー・フィリピーヌ」とは、劇中に出てくる言葉遊びから来ている。
主人公の青年とどちらがデートするかをかけて、二人の女のコが、アーモンドの種を互いにあげてから、次の日の朝に「ボンジュール・フィリピーヌ」と先に言ったほうが望みをかなえられるという遊びをする。
物語の結末は結局は「ボンジュール(こんにちは)」ではなくて、「アデュー(さよなら)」となるわけであるから、このタイトルになる。フィリピン人はまったく関係ありませんので、あしからず。

【あらすじ】
テレビ局で生放送専門のカメラマンの助手が仕事の主人公の青年。
ある日、撮影をガラス越しにのぞいていた女のコの友達同士を関係者のふりをして、スタジオに入らせる。もちろん、食事の約束をとりつけて。
やがて、女のコたちは親友でありながら、この青年にほのかに恋愛感情を抱く。
兵役を控えて今の仕事は退職間近であるのだが、二人の女のコのイタズラで女のコが連れてきた40男とのさりげない恋愛バトルがあった昨日の一夜に思いをめぐらしていた主人公は、生放送中にカメラに映りこんでしまう失敗をしてクビになる。
そうして兵役までの時間、主人公はコルシカ島にバカンスにでかけ、それを二人の女のコもたずねてやってきた。
そして、淡い三角関係は少しずつ大人の恋になっていく。


青年の奔放な日常生活や、美しい女のコ(CMモデル)同士の恋の鞘当がリリカルに描かれながら、コルシカ島の自然の中での恋愛の結末がさわやかに綴られる。
美しい夏の海岸の光景、夜陰での一夜の恋のせつなさ、友情とライバル心をめぐる可愛らしい諍い。
精緻で繊細なカメラワークはいつもすばらしく説得力があり、コルシカ島のシーンになると自然と光をとらえて圧倒的で、なんともはやすばらしい。
ストーリーは本当にたわいもない話なのであるが、破綻のひとつもない物語展開と魅力的な男女三人が忘れられない。
トリュフォー曰く「ヌーヴェル・ヴァーグのもっとも成功した作品」とのこと。
完全に同意いたします。

渋谷ユーロスペースの「ジャック・ロジェのバカンス」と題されたジェック・ロジェ特集より。
いい特集です!

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