クールなり!石原慎太郎原作のおしゃれなヤクザ映画 / 「乾いた花」 篠田正浩

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◇「乾いた花」
あらすじからまとめましょう。
芸能系のシノギを生業とするヤクザ、「鶴見の村木」(池辺良)。
人間ってヤツは不思議だ・・そんなつぶやきとともに、人を殺めた罪で服役から横浜に帰ってくる。
ある日、賭場で不思議な少女(加賀まりこ)と出会い、ミステリアスな言動や振る舞いから、中年男の村木は少しずつひかれていく。
しかし、ある日、関西のヤクザとの諍いから、また人を殺さねばならないことになる。
少女とやった出会えた村木は、その少女に自分が人を殺すその現場に立ち会わせていく。
二年後、服役中の村木は、彼女のその後に死んだことを知る。
横浜橋(まだ公園通りが川だった頃)の風景や、セリフの中の「クリフサイド」(有名な有名人御用達のクラブ)、山下公園のシルクホテルを舞台にしているのが、横浜在住の自分にはうれしい一作。
原作:石原慎太郎のパターン、男が男の価値観の中で破滅していく姿を、冷筆にとらえた作品。そして、その傍らにはさらに冷徹に滅びていく女が存在するのもいつものとおり。
このころの石原慎太郎は不良を書かせたら一級品だった。
しかも都会の不良。
今、すっかり社会的弱者やアジアに対するマッチョイズムを発揮する都知事の人となんという違いか!
そして、篠田の「思想性」などという浅はかな主題主義とは遠く離れたストイックさと、この石原慎太郎の冷たいマッチョイズムは相性がよろしい。
加賀まりこは、篠田正浩作品では、「涙を、獅子のたて髪に」に続き2回目の登場。
賭場で膝を立てて花札遊びに興じる姿から始まる。彼女のファーストショットの横顔は素晴らしくかわいらしく美しい。
不気味な存在のまま終始する藤木孝
そして何より主人公の鶴見の村木を演じる池辺良の存在感!
池辺の苦悩や焦燥が、もっとうまく伝われば良いのだろうが、そこまでは届かなかった。
その分、タイトでスタイリッシュな映像がよろしい。
舞台仕立てもふくめて、クールでおしゃれなヤクザ映画ですよ、これは。
 
国立近代美術館フィルムセンターの「監督 篠田正浩」特集にて。
この特集のパンフレットによると、スコセッシやコッポラが、この作品をフィルムコレクションに入れていた・・・とあるが、それはやはりあの賭場のシーンの迫力がまずは興味をひいたんでしょうね。
あそこだけでも観る価値はあるかも知れません。

なお、Uneted Future Organizationの矢部直がこの作品にインスパイアされた”Visual Session”があります。
これ、かっこよすぎ!いいですよ!

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