北野作品のなかでもっとも自分が好きな作品がこれ。かつ、決定的な映画である。
シンプルな物語は詩情に溢れていながら、小さなエピソードを説話体で積み重ねていく。説話体のストーリーテリングは、観る者に優しく、わかりやすい。
まるで、世の中で持ちまわされたた良くできたジョークのようだ。シンプルでにやりと笑わせるし、それを裏返して、残酷さをこれ見よがしに突き出したり、はかなさや孤独や悲しみを表現することにも使われたりする。
この説話スタイルのエピソードをつなぎあわせて、直線的に筋を進行させていく。あまり前後にエピソードを交錯させない。これがとてもスムーズである。
ソナチネ以降の北野映画では、作品は監督自ら編集を行うのが常。この説話文を、画面の中でひとつの流れに定着させていくのは、たぶん自分でないと出来ないと考えているのではないか。確かに、これはひとつの魅力なのである。
ラストシーン、原石のような素っ気なさながら、それでもキラキラと輝くセリフを残している。
人はこの映画の最後のセリフを決して忘れられないだろうし、きっとこのセリフをいわせたいがために、この物語はつくられたのであろう。
時にユーモアあふれて、ブラックジョークとシュールな抽象性を行きつもどりつしながら、死の衝動や暴力に浸食されていく姿にこだわっている北野武だが、この映画はやはり極めてポジティブで詩情があふれんばかりのラストシーン。
決定的な作品である。そして、決定的に優れた作品にはあまり多くをじぶんは多くを語れない。
オープニングとラスト、対比される自転車の主人公二人の疾走シーン。かぶさる久石譲のテーマ曲。
もうこれだけで自分には十分。
必ず観るべき映画といえる作品。
完璧なる一本。
早稲田松竹北野武特集にて。
完璧なる北野武の青い説話体 / 「キッズ・リターン」 北野武
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