小品「アントワーヌとコレット」について / 「二十歳の恋」 フランソワ・トリュフォー

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この映画のデータベースをよく見てみるとわかるとおり、この作品は5品のオムニバスで構成された映画です。
そのうちのひとつが、30分弱のトリュフォーの作品「アントワーヌとコレット」。
「大人はわかってくれない」の不良少年アントワーヌが、20歳となって、役者ジャン=ピエール・レオーがそのまま出てくる後に続く連作のとっかかりとなる作品です。
トリュフォー以外の作品の監督は、レンツォ・ロッセリーニ、石原慎太郎、マルセル・オフュルス、アンジェイ・ワイダ。
石原慎太郎の監督作品なんていうのは珍しいので、興味がわきますが、現在オリジナルプリントが行方不明とのことです。
石原慎太郎は、過去のガチガチの反抗モノの小説や「殺人教室」のようなバイオレンスも再版せず封印させていますが、きっとその一環なのではないでしょうか・・・と勘繰ったりもできますねえ。
権力の側にたった自分を殺しに来る動機を自分の作品で得られたらたまったもんじゃないんでしょうし(笑)
自分はここでは、神保町シアターの特集「フランソワ・トリュフォーの世界」で観た「二十歳の恋/ アントワーヌとコレット」のみを触れることになりますが、短編なので簡単に。

二十歳になったアントワーヌは、やっと職を得て自分の趣味の世界も持てるようになっています。
職はレコード会社のプレス工場。
音楽業界に勤めていると語ったりしているところが、ややせつなさを感じますが、それでもクラシック音楽の研究会に入りながら、非常にリアルなパリの片隅の若き日々を過ごしています。
この音楽研究会のコンサートで出会った美貌の女のコに恋してしまうアントワーヌの非恋が、この作品のお話です。
さらには、女のコの家族に愛されて、女のコのみならず、その家族ごと愛してしまったりします。孤児に近いアントワーヌの境遇から考えると、とてもせつない感じですね。そして、アントワーヌは、おっさんの自分からしてもかわいいキャラです。
フランス映画の典型ともいえる、あっさりとした結末が逆に印象深く、潔さを感じます。短編ならではの終わり方ですね。短さを逆に活かしてます。
さて、トリュフォーは、アントワーヌの物語を、演じるジャン=ピエール・レオーが中年にさしかかるところまで作品にしていきます。
先行する「大人はわかってくれない」から、この「アントワーヌとコレット」を経て、さらに6年後と8年後「夜霧の恋人たち」「家庭」へ。
そして、そこから9年後、つまり本作品から17年後に「逃げ去る恋」。
この「逃げ去る恋」では、コレットが再び現れる仕掛けとなっております。
ヌーヴェル・バーグの革命児だったころの「大人はわかってくれない」から、徐々に円熟していき、ユーモアや遊びをふんだんに映画に取り入れていく流れが、連作を観ていくとおもしろいところです。
続けて観ていくことをお勧めします。

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