フェリーニの代表作のひとつにして映画史に残る実験的幻想映画「8 1/2」を、ブロードウェイのミュージカルにした「NINE」を映画化したもの。
映画をミュージカルに仕立てて、それをさらに映画に焼きなおすというのも珍しいパターンだが、そのミュージカルの方はどんな出来具合いだったんでしょうか。
「人生なんて祭りなんだから、みんなで楽しもう」
そういうラストのセリフが、難解夢幻的な映像の最後に配置されてシニカルかつ奇形的にハッピーエンドを迎える映画が「8 1/2」。
一方、ミュージカル版から焼きなおされたこの「NINE」はブロードウェイでの上映にふさわしく、もう少しわかりやすく、仕事と恋と家庭のはざまにたたされて、ヤケのヤンパチになったイタリア中年男のミュージカル映画となっております。
基本的なあらすじは「8 1/2」を踏襲しながら、最後にはなんだかまた温い終わり方で映画業に復帰するというのも、幻想めいた結末とは違い、極めてわかりやすい。
そのため、「8 1/2」のファンならば、観たことあるようなシーンやフェリーニ作品へのオマージュとおぼしきシーンも織り込まれているのに楽しみを見出すことでしょう。
しかし一方、華麗かつショッキングな映像や、頭の中に?マークがいくつも飛び交うようなシーンの連発を、映画のマジックとして評価していたのですから、さすがに「NINE」にはご不満になるのではないかと。
主演のダニエル・デイ=ルイスの、カッコよくておしゃれで仕事の出来る男、しかし女にはからきしだらしない・・・という役どころは面白かったし、良く演じていたでしょう。
ところが、自分からいわせると女優陣は・・・
マイケル・マンの「パブリック・エネミーズ」では薄幸なギャングの愛人を演じていたマリオン・コティヤールは、こちらでもやはり有名女優ながらダメなダンナのために夫婦生活に恵まれないキャラを演じていますが、ミュージカルシーンで出てくると、いやー厳しいかも。
ペネロペ・クルスは、ランジェリー姿でセクシー・ダンスをお披露目します。
これはこれでよかったんですが、大味演技は相変わらず。ファンの皆さま、すみませんが、自分はあまりに過大評価されすぎていると思うのです、この人。
そして、「ムーラン・ルージュ」以来のミュージカルとなるニコール・キッドマンですが、残念ながら今回は見どころは極小。前作「オーストラリア」では、映画の出来とは別に、とても敏捷でリズミカルな演技をみせていたのに、こちらではただ老いてきたなあと思わせるにとどまります。
さすがに、ミュージカルからもってきた映画だけに、巨大舞台セットを背景にするダンスシーンはお見事でしたけれど、そこまでですか。
そんなわけで、9(NINE)-8 1/2 =0.5点というところ。
フェリーニが8 1/2とタイトルにつけた理由は諸説ありますが、この映画のタイトルは明らかにそれを意識しているでしょうけど、そこになんらかの面白い意味もあんまりなさそうですね。
よって、単にフェリーニを抜いたら0.5点の映画ということになってしまいます。
逆に、もう一度8 1/2を観たくなりました。
ところどころのイタリア観光地的なシーンの美しさはよろしかったです。
ここだけは、ミュージカルシーンとともに評価いたします。
FWF評価:☆☆☆★★
「NINE」 ・・・ 9 - 8 1/2 =0.5
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