テレンス・マリックの「ツリー・オブ・ライフ」のクスリは効きませんでした

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「ツリー・オブ・ライフ」公式サイト
あいかわらず、映画の前情報はほとんどチェックしません。
この映画の監督がテレンス・マリックで、あの「シン・レッドライン」の監督だと知っていたら、果たして劇場に足を運んだか。うーん、まあいったんでしょうね、それでも。


「シン・レッドライン」(1998)を観たときの当時の感想は、さすがアメリカさんや!戦争やりながらこんな夢うつつの哲学を語るぐらい余裕だな!というものでした(笑)
仕立てのナレーション(独白)で進む筋立てに正直辟易としたことも覚えています。また、なんだかガダルカナルのジャングルの草が妙に綺麗だったことも。
大岡昇平の戦争ものを思い出しつつも、立場の違いでずいぶん考えることも違うもんだなとも。
よくよく考え見ると、自然への共生感と回帰と、強制する父(軍隊)への反感という二つのテーマでつくられていた「シン・レッドライン」と、本作「ツリー・オブ・ライフ」は同じものですね。
一人称で語られるストーリーもそうです。
ただし、今度の作品のほうがさらに延々と生命と死とそれを包む自然というテーマが、強烈に前に押し出されています。それが映画の最初の30分、延々と。しかもVFXを駆使しながら。
そんな自然と美しい映像美に、父との確執というテーマが、突き刺さった棘のように痛覚を刺激する映画を狙ったところなんですが、むーむーむー。
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まず、ブラット・ピッドなんですが、そもそも最近は一流どころの監督の作品で、そろいもそろったバカ役を演じることが多く(「バーン・アフター・リーディング」「イングロリアス・バスターズ」)、そして今回もマッチョを気取って家庭に君臨する父というバカどころ。
これがまたなんというか、浮いちゃっているんですよね。バカに品格ないんですよ。エディプス・コンプレックスを発動させる仕掛けとして、あまりにも戯画的で感心できない。
主人公(ショーン・ペン)の内的光景と回想からつくられる映画なんです。
詩的な光景をVFXで一生懸命つくりだそうとしたり、時折はっとさせられる美しいシーンはいいです。
が、まあどうなんでしょうね。ところどころに布石がおかれて、やっぱりホワイト・アングロサクソン・プロテスタント的な世界認識観みたいものが靄のようにふりまかれているんですけど、これに自分はついていけない。全くダメ。「シン・レッドライン」と同じパターン。
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生命の樹
というか、この映画がよく夏休みのシネコンのプログラムとしてピックアップされたのも不思議。まあ、これはシネコンのメニューとしては決定的に厳しいでしょう。こういう反動的な映画を夏休みのどまんなかにぶち込む勇気、これはこれで評価に値するとも思いますけれど。
ブラット・ビッドとショーン・ペンの親子の物語みたいな糖衣をかぶせたクスリみたいな映画ですよ。ただ、なんというか、これは日本人には効きません。独自の自然との不思議な共生感みたいもの(プロテスタンティズム)を肌で理解できないとダメでしょうね。黒人が映画でほとんど機能してないで風景の一部としてしか出てこないのも、これによるものでしょう。
良薬口に苦し。さりとて、このクスリはわたしには効きませんでした。
そんなわけで、なんじゃろうかこの映画は、と考えていたところで、蓮実重彦先生がこの映画を群像の連載で大酷評していたというニュース(?)がはいってまいりました(笑)
何がお気に召さなかったのかは知りませんが、久々に見解の方向性が一致。まあどうでもいいですけど。
あの映画は映像がキレイだった・・・という評価は、ほめるところがない時にむりくりで褒めるときの決まり文句と言ったのはダレでしたっけ?まあ、そういう映画ですね。
FWF評価:☆☆☆★★

コメント

  1. 映画:ツリー・オブ・ライフ 宗教観を語った内容に、感性が合うか合わないか、がポイント。

    カンヌ映画祭パルムドール受賞作品。
    評判が天地のように別れていたので、DVDスルーしようと思っていた。
    すると「抽象的な映像が多いから、DVDだとつらいかも」という話もあって、新宿での公開最終日に駆け込み(汗)
    オープニングで、旧約聖書のヨブ記38章の4節が引…

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