コンビニ大福餅のキャスティングがまたよろし / 「告白」 中島哲也

「告白」公式サイト
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まあ本当によく出来た映画である。
最初に書いてしまうと、唯一、松たか子のピックアップを除いて、という注釈付きで。
いつもこの女優のとりすましてもっさりとした演技に辟易としていて、コンビニのレジの前においてある大福餅を見ると、時折ながらこの人を思い出してしまうものとしては、いくら世評が高くても、どうにもこうにもなのである。
確かにこの映画の魅力のひとつに、松たか子のテレビずれしたもっさり感のある演技が、逆にクールなビジュアル設計とRED ONEシネマカメラと思しき撮影のテクニックとカット割の巧みさの中で、唯一粉のふいた大福を手のひらにのせたときの重みのような安心感のようなものを与えているというところは確かにある。
だから、確かに、この物語の真ん中にはこの人がいていいのかも知れない、とは思います。
ただし、自分はこの人が主演ということで、本当に無視してしまう映画になりかけました。
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以上は映画の文句というより、自分の好みを語っているだけにすぎませんが。
好きな方にはごめんなさい。でも、この作品にかぎっては、自分は大福っぷりがかえって良いということを微妙にほめているつもりです。
簡単に筋立てをまとめてみましょう。
少年法という本来は保護・育成の観点から特別に設けられた刑事訴訟法故に、憎むものを裁くことは出来てもそれを復讐といえるところまでは至らない。
そのために、シングル・マザーの女性教師は、自分の娘を殺したクラスの生徒に対して、残酷な復讐をしむける。
一方、徐々にゆがんだ母子愛に苛まされていた犯人の生徒ふたりは、ゆがんだ正義感をもったクラスメートのイジメや自分自身の罪悪感から、精神の隅に追い詰められていく。そこから脱出しようとする試みは成功するにみえたが、実はそこにも女教師の罠がかけられていた・・・。
悪漢が法に守られているという矛盾を超法規的に乗り越えて処罰していくアンチ・ヒーローといえば、ダーティー・ハリー。このコンビニ大福の女教師はまさにアンチ・ヒーローのIQが高いハリー・キャラハン。
犯人の生徒のゆがんだ精神を逆手にとって復讐を成し遂げたあとに、「ここから彼らの更生が始まるのでした・・・なんてね。」とうそぶくわけです。どちらかといえばヒーローですらない。これは単なる復讐であると、ラスト・シーンできっちり説明されているわけです。
まあ、シビアな話ですよ。
このストーリーだけでも、かなり噛みごたえがあってボリュームもなかなかなのですが、そこにこの映画は、独特の無機的なブルーにつつまれたデザイン・スケープとスピーディーかつ現在的センスあふれるポップな映像を見事にからめ合わせました。
映像美で学校の日常の中に潜む残酷を撮った邦画といえば、岩井俊二の「リリイ・シュシュのすべて」などを思い出しますが、「告白」は緩やかなビジュアル映像を魅せていくというよりは、完全に速度感を使いこなしきっています。
カメラ・ワークも見事。RED ONEシネマカメラですよね?たぶん。そのぶん、さらにビジュアルは見事です。
告白形式で登場人物の複数の視点から物語を追っていくのは、最近だと「愛のむきだし」がやっていましたが、冒頭の長い告白からいったん物語が終わりかけるような印象をつくって、そこからさらに二重三重の物語のひっくり返しが出てくる展開は、「愛のむきだし」にチラっと影響を受けているのかなとも思いました。音楽の使い方も。
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ストーリーに戻って、もう一度ふりかえります。
母子愛・・・もともと教師が生徒に惜しみなく与えるべき愛はとうの昔に否定されてしまっています。映画の中では、ゲームセンターでつかまった生徒を女性教師は迎えに行くことが禁じられているエピソードがありましたね。そこでは、そんな愛は問題をおこしてしまうだけなのです。
それを期待した生徒は、逆恨みで犯行におよぶこととなってしまうのですが、そんなことを理解するでもなく、大福教師は坦々と生徒を追い詰めていき、さらに大きな復讐まで準備します。
犯人の生徒は残酷で救い様のない存在ですが、本来、赦しや慈愛に満ちた存在であるべき教師の姿はそこにはなく、さらに残酷で救いようのない復讐をたくらむシングル・マザーだけがそこにいる。これは怖い話ですよ。

なんにしても良く出来た映画です。
今年の邦画では現在までのところベストでしょう。
この監督、エンターテインメント色の強い作品で自分は好きなひとりですが、こういうのも撮れるわけですね!
FWF評価:☆☆☆☆★

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1コメント

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  1. 映画「告白」見ました

     
    小説は随分前に読みました。
    小説はとても面白かったけど、結局誰一人救われないので読後どんより・・・
    映画化の話を知った時は「これをどんな風に?」っていうところに興味がわきつました。
    小説の映画化という意味では、超完璧・・・というか小説でいまいちリ…

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