◇「涙を、獅子のたて髪に」
1962年篠田正浩監督作品。
横浜の山下公園の港湾労働者の労務紛争を背景にしつつ、社会派ドラマの枠を超えて、スタイリッシュな映像を絶妙なキャスティングを軸にまとめあげた佳作。
請負師に雇われたチンピラの主人公役に、当時の人気ロカビリー歌手藤木考を起用。
ヒロインは、コケティッシュ魅力が鮮烈な印象を与える加賀まりこ。加賀まりこは本作が映画デビュー作。
加賀まりこの素晴らしさは特筆ものでもある。
しかも、まだ小悪魔的なキャラ造形が出来てないため、本作品では男の部屋にひとりでは入らない、というぐらいの清純派!
ロカビリー歌謡映画のつくりも散りばめつつも、社会派ドラマとしてのまとめ方もソリッドで好感がもてるうえ、映画の背景に、60年代の横浜の風景も効果的に取り扱われているのも嬉しい。
ドリー撮影の山下公園のストリート、象の鼻突堤には灯台ジャック、マリンタワーや山手の洋館、そしてクリフサイド。皆、古き良きヨコハマの風景である。
脚本には、寺山修司の名前があるが、孤児の破滅の筋立てや、怪しい妖女 岸田今日子の役どころ、不具者や貧困の現状の一方でスポーツカーや客船の模型が主要なところで、隠喩のように表れる仕掛けなどは、寺山節といったところか。
ちなみに、ひとつだけケチをつけるとすれば、タイトルが著しく意味不明(笑)
東京国立近代美術館フィルムセンター、特集「映画監督 篠田正浩」にて。
いつも貴重な作品観せてもらってます。
こういうハコモノ行政なら大歓迎!
加賀まりこデビュー! / 「涙を、獅子のたて髪に」 篠田正浩
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