ジジェクの映画評論決定版[豪華映像特典付] / 「スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド」

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「スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド」公式サイト
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スラヴォイ・ジジェクは、スロヴェニアのラカン派の精神分析学者にして哲学者。
難解なラカンの理論を、映画やスティーブン・キングのようなノベルに適用して解釈する一連の論考は有名である。特に、ヒッチコックについては数々の著作で言及されている。たぶん好きなのだろう。
この映画は、ラカンの理論というよりは、もっと精神分析学としては入門編的なフロイト理論による映画解釈といったところからはじまり、極めて簡略化されたラカンの理論までを、豪華絢爛な映画のシーンの引用で綴られる。
そういう意味では初心者向けとはいえるのだが、少なくともフロイトの「スーパーエゴ・エゴ・イド」(超自我・自我・エス)や、エディプスコンプレックス、ラカンの「現実界」などという基本タームと概念は理解していないと、映画の最初から、とにかく早口でまくしたてるジジェクのトークには全くついていけないだろう。
逆にこれらをある程度アタマにはいって観れる人ならば、かなり楽しめるのではないかと思います。ジジェクの正確無比な映画解釈の手さばきに感心すること間違いなし。
また、この映画の引用シーンが、まさに古今東西の傑作の核心シーンばかりなのはかなり楽しみとなる。
ほとんどネタバレに近いあのシーン、このシーンが次々と、ジジェクのちょっとユーモラスな巨体の外見から機関銃のように炸裂するトークとともに紹介される。
この次々と引用されていく名作のダイジェスト映像としてみるだけでも、もしかしたら楽しいのかも知れない。
それにしても、「スターウォーズ・エピソード3」や「エイリアン4」や「ブルー・ヴェルヴェット」のあんなシーンだしちゃっとよいものなのだろうか、いくらなんでも。
スティーヴン・キングやヒッチコッチに対する偏愛を著作で露骨にあらわしてきただけに、サスペンスやスリラーやホラー、その要素をふんだんにもったSFなどの引用が非常に多い。
やっと、ヒューマン・ドラマかと思えば、「トリコロール/青の愛」の中で、かなり異質なイメージをつくっていた生まれたばかりのネズミのシーンとは!
デビッド・リンチやヒッチコックが好きでたまらない人は、とりあえず、映画の受け取り方を学習する意味でも観ておいたほうが良いかもしれない。
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そんなわけで150分の長い映画ですが、自分はかなり面白く楽しめました。
それでは、この映画でジジェクが伝えたいと思ったことを100%受けとめきれたかというと、これは無理。たぶん、2回3回見ないと、あの早口マシンガントークは咀嚼できません。
DVDがほしいところですが、日本では未発売。
関本洋司氏のブログで、イギリスのアマゾンで買えることはわかりましたが、なんとかダゲレオ出版さん、日本で発売してくれませんかね。

FWF評価:☆☆☆☆★

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