-->「新宿アウトロー ぶっとばせ」 藤田敏八 - Football is the weapon of the future フットボールは未来の兵器である | 清 義明

「新宿アウトロー ぶっとばせ」 藤田敏八

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「新宿アウトロー ぶっとばせ」

・日活ニューアクションになんとか自分のテイストを入れようと新人監督だった藤田敏八ががんばっている映画
・原田良雄と梶芽衣子+藤田敏八の組み合わせの最初の作品で初々しい
・・・などと、映画観ながら頭の中で箇条書きにまとめていて、すっかり油断してたらロケで根岸屋が出てきた。
根岸屋は、横浜は伊勢佐木町にある伝説のレストラン(?)。
外人も日本人も入り乱れて火花を散らすような活気に満ちた場所であったと、戦後の横浜を語るうえでは欠かせない場所
黒澤明の『天国と地獄』でも根岸屋は出てくるのですが、これはなんと本物そっくりにつくったセットだったそうな。50年代の根岸屋は絶頂期にあたる時代だったため、ロケは無理だったんでしょう。
『ヨコハマメリー』では、往年の根岸屋前にたっていた時代の街娼のメリーさんを追いかけて、この店の言われ因縁ありそうな往年の姉さんたちや、その筋の人たちにインタビューしてました。
今や往年の栄華の面影が薄くなりつつある伊勢佐木町で、年老いた筋の人たちが懐かしそうに根岸屋を語る姿が印象的でした。
なお、横浜の伝説の愚連隊「モロッコの辰」は米兵相手に大立ち回りを演じ、白人相手のケンカに加勢してきてくれたのが、黒人兵だった・・・というような有名なエピソードの舞台も根岸屋でした。
なお、モロッコの辰は、『修羅の群れ』にもちょいちょいと出てくるけれど、『Morocco 横浜愚連隊物語』(96年)では柳葉敏郎主演でメインで出てくる。こちらは未見のため、根岸屋が出てくるかどうかは知りません。
ああ、そういえば「モロッコの辰」の名前の由来は、マレーネ・ディートリッヒとゲイリー・クーパーの戦前の名作映画「モロッコ」だったそうな。
なお根岸屋は、この映画の撮られた5年後の1975年に火事で焼失。すでに往年の繁栄から遠くなっていたため、火事の原因はいろいろと取りざたされているようです。
さて、藤田敏八の『新宿アウトロー』に戻りましょう。
根岸屋がちゃんと映画の中に出てきたのは、のなかにカメラ持ち込んだの始めてなのではないでしょうか。すでに、異国情緒とスリルに溢れるところではなくなりつつあるとしてもです。
こんなマニアックなポイントで、おお!と思った自分ですが、その後も解体中のビルの中でのロケとか、ヘリコプターを団地で超低空飛行させたりと、かなり気合いを入れて頑張っているのが見てとれました。
思えば新宿のタイトルがついているのにも関わらず、いきなり冒頭ヨコハマというのも、それなりに気合いのはいっている証左か?(笑)
原田良雄と梶芽衣子という、藤田敏八の必殺のカップリングもここから始まっています。
金持ちのボンのくせに、不良でいることを選びとった原田良雄が、麻薬の商売で穴をあけてしまったため、それを取り返すべく、刑務所から出てきた死神と呼ばれたワルの渡哲也に助っ人を頼む。この二人のクライムサスペンス的な展開から、あっけらからんとハッピーエンド?で終わるラストシーンまで、三角関係や敵対しつつ芽生える男の友情が絡み合う一筋縄ではいかない藤田敏八ワールド。
原田良雄も藤田敏八も若々しく、不器用な梶芽衣子と、それなりの風格がすでに備わっている渡哲也が微妙にマッチした作品です。
銀座シネパトスの特集【日本映画レトロスペクティブ】「 梶芽衣子スタイルその魅力にはまる」にて。
この特集、図らずも亡くなった原田良雄作品がいくつもありました。梶芽衣子といったら、やっぱり原田良雄なんですかね。

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