愛のコリーダ(「原題」:” L’empire de la sens”-官能の帝国-)に続き、この作品のタイトルも「帝国シリーズ」となります。
 その名も”L’empire de la passion”-情熱の帝国-。
 邦題は、「愛の亡霊」。この邦題に近い、”Fantôme amour”(亡霊の愛)というタイトルでも流通しているようです。
 フランス資本で作られるジャポネスムを逆手にとった映画とでもいえばいいのでしょうか?
 (このへんは小生の「愛のコリーダ」のレビューをご覧くださいませ)
 しかし、どろどろの情念が、これでもかとこれでもかとスクリーンに塗りこめられるような大島映画にしては、この映画の筋立てはシンプルです。
 不倫の痴情の果てに、人力車夫の夫(田村高廣)を殺害してしまう、嫁(吉行和子)と年端もいかない兵隊帰りの男(藤竜也)が、車夫の亡霊に苛まされて・・・という物語です。
 シンプルな筋立てですので、そうすると、それ以外の部分が重要になっていきますが、この映画では、「愛のコリーダ」から引き続く、鮮烈な色彩感覚がひとつポイントとなります。
 日本の山間の集落を、魚を煮しめたようなぬめぬめとした映像の肌合いで撮り、そこに時折鮮烈なカラーが提示されます。
 これを美的な感覚として楽しめるならば、映画の観客としてはOKでしょう。
 もうひとつ、極めつけは、吉行和子の演技。
 ちょっとアタマが弱くて、それ故に殺人などということを犯してしまう、まさに性愛の女を見事に演じきっています。
 こういう表現がいいのかわかりませんが、亡霊に追い回されていく彼女の姿は、キュートですらあります。見事に、「情愛の帝国」の住人を演じきっています。
 「愛のコリーダ」ほどのそのものズバリのエロとグロは出てきませんので、そういう意味ではお勧めですが、その分、吉行和子に頼り切った感がしてしまうのは自分だけか。もちろん、秀作であることは間違いありませんが。
 「愛のコリーダ」の反響をもとに、もう少し日本の古典的な情念話(つまり怪談)をとりあげてみたというところなのでしょうか。
 ただ、いわゆるホラーのような怖さはありません。
 ちょっとだけ、おまけ的なエピソード。
 この作品の村の村長の結婚式の場面が出てくるんですが、このときの面子は「儀式」のメンバーそのままですね(笑)
銀座シネパトス大島渚特集にて。
帝国シリーズ第二弾は吉行和子 / 「愛の亡霊」 大島渚 【映画】
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