ツボにはまる人にはたまらない魅力を湛えた映画でしょう。
そして自分もハマりました。これは素晴らしいです、名作です。
やんちゃで、こまっしゃくれた女のコ「ザジ」が、クレヨンしんちゃんみたいな毒舌を吐きながら、パリの街なみを走り回ります。
おかっぱの髪を振り乱しながら笑っている姿で、わかっているのかわかってないのか、こにくらしいことを言うのですが、皆それを受けとめながら、物語は進みます。
物語・・・といっても、物語らしい物語は特になく、ひたすらドタバタ喜劇が続きます。
ただし、これがまたよく出来た構図と美しいカラーにつつまれながら、右に左に映像がすっとんでいくスピード感は心地よく、楽しみに楽しめるものです。
もともと、考えても見れば少し悲しい少女なんですよ、このザジちゃんは。
パリにやってきたのは、片親の母が恋人と落ち合うためで、情事のためにザジは親戚のおじさんにあずけられます。
おじさんはたれ目でユーモアあふれて、しかしちょっとおっちょこちょいです。そう、「ニュー・シネマ・パラダイス」のあの爺さんですよ!
きっと母親に「パリに行ったら、地下鉄に乗れるよ」と言い含められてきたのでしょう。期待していた地下鉄は、けれどストライキの真っ最中。そして、ザジちゃんのパリでの冒険が始まるわけです。
ルイ・マルは、ヌーヴェル・ヴァーグの監督とされることが多いですが、この映画は型破りの即興映画手法というよりは、どちらかというと計算されつくした精巧なコメディかと思います。
撮っている監督もスタッフも楽しくて仕方なかっただろう終盤の作り手も面白かっただろう悪ノリシーンや、パリの街を観光名所的にとりあげたロケ撮影の多用では、確かにヌーヴェル・ヴァーグ調ではありますけれど。「死刑台のエレヴェーター」も、自分はあまり好きではないヌーヴェル・ヴァーグでひとくくりにされるような映画ではないでしょう。
ああ、観てよかった、面白かった!古典の映画をこういう気持ちで楽しめるというのは、貴重なことですよ。
関係ありませんが、日本の映画配給会社に「ザジ・フィルム」というところがありますね。この前観た、「海角七号/君想う、国境の南」もこの会社が配給元でした。あらためて、この会社の配給実績みてみると、たぶん趣味が似ている人が多いんでしょう、自分も大好きな良質な作品が並んでいました。
おしゃれでかわいいスラップスティックの名作 / 「地下鉄のザジ」 ルイ・マル
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