-->野良猫、港町ヨコハマへ / 「野良猫ロック マシンアニマル」 長谷部安春 - Football is the weapon of the future フットボールは未来の兵器である | 清 義明

野良猫、港町ヨコハマへ / 「野良猫ロック マシンアニマル」 長谷部安春

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ホリプロが和田アキ子の売り出しのために企画・制作した、シリーズ第一作となった「女番町・野良猫ロック」は、併映の「ハレンチ学園」のためもあるだろうが、当時の日活としてはヒット作品となった。
これにより、70年代日活ニューアクション映画の象徴的な存在ともいえる「野良猫ロック」シリーズが立て続けにプログラム化されて公開された。
以下、まとめてみる。
「女番長・野良猫ロック」 監督:長谷部安春(昭和45年)
「野良猫ロック・ワイルド・ジャンボ」
 監督:藤田敏八(昭和45年)
野良猫ロック・セックス・ハンター
 監督:長谷部安春(昭和45年)
「野良猫ロック・マシン・アニマル」 監督:長谷部安春(昭和45年)
「野良猫ロック・集団暴走 ’71」 監督:藤田敏八(昭和46年)
第一作から順に、新宿・芝浦(?)・立川・横浜・新宿と、わずか一年の間に70年代初頭の風俗とともに駆け抜けていったのが、梶芽衣子と藤竜也。
梶芽衣子は、「女囚さそり」や「修羅雪姫」でのこれまた70年代テイストあふれるカルト作品とともに、この作品を代表作とする。
ホリプロタイアップの第一作のヒットに、当時火の車の財務状況だった日活は、ここからこれでもかと作品をつくり続けるが、そのためにシリーズレギュラーメンバーも少し入れ替わりがある。前作、立川の米軍基地でアナーキーで狂気に満ちた不良の殺し合いをストーリーとした「セックス・ハンター」では、唯一、梶芽衣子とわたりあうだけの燦爛とした魅力を放つ范文雀が欠けていた。

この作品「マシン・アニマル」では、范文雀はカムバック。横浜は山手とおぼしき高台の豪邸にひっそりとすむ下半身付随となった不良の元締めとなっている美少女を演じている。これがまたよろしい。
あらすじは、ベトナム戦争の反戦ムーブメントが盛り上がりつつあるこの時代らしく、脱走米兵を逃がすために岩国の基地から横浜に来た二人(藤竜也し岡崎二郎)のLSDをめぐる、くんずほぐれつのやりとりがメイン。
前作は立川という基地の町が舞台で、その基地に対峙した日本人が自滅していくという極めて60年代テイストあふれる設定だった。
こちらも同じ基地の町横浜だが、こちらはそういう差別/被差別とか占領/被占領といったシリアスさは感じられず、ことによっては脱走兵のお話というならそちらがより真剣な問題なのかもしれないけれど、あっけらからんと話は進んでいく。
そもそも脱走兵のお話ならば、大江健三郎も中上健次も取り扱ったテーマ。これも60年代テイストのテーマなのだが、それにしてもなぜ本作は前作よりもここまで明るいムードで進んでいくのか。結末はそれなりにアン・ハッピーなわけですが。
同じ基地の町なのに、立川というような飛行場の話では飛び立つファントムやB52の爆音がヒステリックに強調され、横浜・横須賀といった港町の話では、日本人の元気さやたくましさのほうに焦点があっている。これはどういうことなんでしょう、なんとなく比較して考察してみたい気分です。
敵方が不具でインポテンツという設定はおんなじなんですがね。
そんなわけで、本作の梶芽衣子は、ややものわかりのよくてやさしさまで垣間みせるところもあったり、モンキーバイクをバイク屋でちょっと拝借!して、ズベ公軍団が隊列組んでで横浜の山下港近辺を爆走などというユーモラスなシーンもひとつの見どころ。
自分はこういうのは好きなんですが、まあみなさんはどんなでしょうか。

池袋新文芸坐の梶芽衣子特集「野良猫ロックvs修羅雪姫」にて。
このオールナイト特集で修羅雪姫と野良猫ロックを立て続けにシリーズ中の4本観ましたけど、まあなんという体験か(笑)

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