-->「刑事ジョン・ブック -目撃者-」 ピーター・ウェアー - Football is the weapon of the future フットボールは未来の兵器である | 清 義明

「刑事ジョン・ブック -目撃者-」 ピーター・ウェアー

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刑事ジョン・ブック 目撃者 - goo 映画
1985年の作品。この映画をテレビで観たのは、もうどれくらい前か。
そのときに気になったのは、どういう吹き替えしていたのか忘れたが、突然ハリソン・フォードが「このコーヒー、最高だね!」とようなことをつぶやくのだ。
厳格な教義ゆえにつつましやかで原始的な生活をしつづけているアメリカのアーミッシュ派の一族である未亡人が、ハリソン・フォードを誘うようなシーンの翌日。ちょっとぎこちなく無口な朝食で、その雰囲気を和らげようとした、彼のちょっとしたジョークというところなのがコレ。しかし、これが笑えない。

もちろんこんなシーンのことは忘れていたのですが、午前十時の映画祭でこの「刑事ジョン・ブック」を再度観て、またこの違和感たっぷりのシーンに遭遇し、まざまざと20年くらい前のなんじゃこりゃ?という感覚を思い出したわけです。
さっとあたりをつけて、もしかしたらそういうコーヒー(もちろんインスタント)のCMがあったのではないかと思い、グーグル先生にご相談。
すると、やっぱりあれはヘンなシーンだったらしく、いろいろとこれについての解説がありました。
いわく、ハリソン・フォードの最初の芸歴は、FolgerというコーヒーメーカーのCMの仕事だったそうな。そのときに「このコーヒー、最高だね」というセリフがうまくいえなかったことがあり、それをぎこちないジョークという設定の中で使ってみたということらしい。

これでやっと謎がとけたわけです。まあ謎ってほどでもないということがわかったというか・・・。
こういう内輪ネタみたいなのは、他にももうひとつあって、それはアーミッシュの儀式で、新婚家庭を祝ってみんなで倉庫を建てるシーンがあるのですが、そこでハリソン・フォードも手伝うことになるわけですが、そのときにアーミッシュの爺さんが、「大工でもやっていたのか?」みたいなことを聞くのですが、もともとハリソン・フォードは無名時代に大工だったんですね。

これも初耳でした。
まあそんなわけで、銃とバイオレンスとアクションが徹底的に様式化されて現実感を失った現代のサスペンス映画とは全く趣が違う、ほのぼのとした刑事もの。はぐれ刑事純情派なみの刑事の弱さと、さらには腐敗した警察組織からの逃亡といったところは70年代的なのかな。
物語は基本的に定型。ひょんなことから少数派の世の中から蔑視されているアーミッシュに入り込むことになり、その立場に次第に共感しながら、その社会の一員的になる。
自分がいた「文明社会」は腐敗しており、倫理を失っている。
「アバター」しかり「ラストサムライ」しかり「ダンスウィズウルブズ」しかり。
どうしてアメリカ人はこういう物語を延々再生産し続けるのでしょうか。
案の定、アーミッシュの人たちからは、この映画に対してかなりの批判があったようですね。なんだかなー。
そんなことを考えつつ、もうキャリアの最盛期だったころのハリソン・フォードの独演会のようなこの映画を観てきましたよ、と。
みゆき座午前十時の映画祭にて。

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