西ドイツの赤いパンデミック / 「バーダー・マインホフ 理想の果てに」 ウーリー・エデル

◇「バーダー・マインホフ 理想の果てに」公式サイト
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ジャニス・ジョプリンの『ベンツが欲しい』に始まり、ボブ・ディランの『風に吹かれて』に終わる映画です。
ディランの『風に吹かれて』は、「答えは風に吹かれて舞っている」というリフレインが記憶に残る曲ですが、こちらの映画は、風といっても激しい突風の中で吹きさらされているかのようです。
映画の原題は「バーダー・マインホフ症候群」。
60-70年代に吹き荒れたこのウイルスのようなムーブメントの破壊力について、徹底的に描ききっています。その速度はすさまじく、そのため詳細なドイツの赤軍派の成り立ちや社会的な背景は、激走する車内からみる風景のように押し流されてしまっています。
冒頭の「ベンツが欲しい」(この曲の最初にジャニスは「これは政治的な主張なのよ」と茶目っ気見せつつ宣言しています。)から始まり、ヴェトナム・ヒロシマ・ドレスデン(ドイツにおける東京大空襲のような一般市民を巻き込んだ空襲です)と連呼する若者や、クリスチャンの牧師の親への娘からの政治的な主張、そういったものが次々と表れては消え、そして暴力闘争に走る様につながっていきます。
このような暴走は、実はドイツの市民の意思でもあったことも映画には触れられています。政治活動に対するシンパシーは、何度か一般市民と思しき人々から発せられているのです。ウイルスの流行は、決して先鋭化した一部のものだけが罹患したものではなく、パンデミックとして西ドイツに猛威を振るったわけです。
その闘争が果たして何かを生み出したのか?一見すると、悲劇に終わる物語として、否定的な評価に落ち着くようにも見えますが、決して映画はそのようには描いてません。勝者ではなく自殺した敗者とも必ずしも受け取れません。ただそこには悲劇が風に吹かれているだけです。
厳しくストイックなストーリー・テリングです。だからこそ、この映画は迫力あるわけです。
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政治的なテロリストの物語では、例えば2006年のパルムドール、ケン・ローチの「麦の穂を揺らす風」、ホウ・シャオシェンのヴェネェチア映画祭グランプリの「悲情城市」、そして日本であれば、若松孝次の「実録・連合赤軍、浅間山荘への道」などがありますが、どの映画も衝撃的であり、そのラインナップのひとつに自分としてはこの映画を加えたいと思っています。

映画は2時間30分の長丁場。しかし、突風に吹きまくられた自分には、そのように長くは感じられませんでした。GOODです。
FWF評 ☆☆☆☆

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