カテゴリー: 書評

『ネオコンの論理』 アメリカの単独行動主義の理論的背景

ネオコンの論理

とあるアメリカの保守系のシンクタンクの機関紙に出たひとつの論文を増補したもの。

論文のタイトルは原題は『力と弱さ』。ここにおける「力」とはアメリカのことで、「弱さ」とは欧州のこと。

筆者はレーガン時代の国務省のスタッフで、国際平和カーネギー基金の研究員。この論文はその内容から、かなりの衝撃を欧州に与えた由。

いわく、もはや「欧米」という言葉が現実的でないほど、アメリカと欧州の政治的な方向性は隔絶してしまっている。… 続きを読む

『ハイリスク・ノーリターン』 (山口祐二郎)

ハイリスク・ノーリターン
十九歳の地図 (河出文庫 102B)◇『ハイリスク・ノーリターン

2007年に市ヶ谷の防衛省に火炎瓶を投げ込んだ右翼青年のことは覚えている。

その当時の報道で職業が日経新聞の新聞配達員となっていたからだ。この職業と事件のつながりが、すぐに中上健次の「19歳の地図」を思い起こさせた。これが強く印象に残っている。

そしてそんな事件も忘れてしまっていたところでこの本を読む。その時の右翼青年の自叙伝。自叙伝といっても、著者はまだ27歳。

美と共同体と東大闘争 (角川文庫)統一戦線義勇軍はいわゆる新右翼。55年体制後のいわゆる右翼とは一線を画する。その主張はざっくりといえば反米愛国。自民党に対してもどちらかといえばアンチ。現在のネット右翼の主張とも相容れない。むしろ戦前の右翼の主張にたいへん近い。そもそも新右翼の成り立ちからして、三島由紀夫の自決に触発されたものであるから、非常にロマン主義的である。… 続きを読む

『日本史の誕生 -千三百年前の外圧が日本を作った』 岡田英弘

日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫)
◇『日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫)

いかがわしさとギリギリで大変楽しく読めた本。

タイトルが「日本の誕生」ではなく「日本史の誕生」となっているところがミソ。

筆者の主張をざっくりとまとめると以下のとおり。

・日本は紀元前2世紀前後(秦の時代)に中国の支配下にあった植民都市のひとつであった。
・魏志倭人伝に出てくるような日本の「国」というのは、中国商人がつくった商業都市(定期市がポリス化したもの)のこと。

続きを読む

『ブレア時代のイギリス』

(初出2007年10月22日)
s979_20120325042425.jpg
イギリスでは新自由主義的な転換が最も早く行われたがゆえに、新自由主義の限界もいち早く明らかになった。新自由主義的な改革とは玉葱の皮むきのようなものであり、「官から民へ」を推し進めた終着点で、政府が何をするのかについては何の構想もない。新自由主義はその意味で政治の否定なのである。

ブレア時代のイギリス 山口二郎 







イギリスは二大政党制の国であるが、この十年は労働党の政権が続いている。… 続きを読む

吉本隆明について(1) / 『ぼくが罪を忘れないうちに』 

吉本隆明が亡くなった。87歳。

この人を自分が最初に知ったのは、哲学者や文芸評論家としてではなく、詩人としてだったと思う。
現代詩手帖を読んでいた高校生の時期。

鮎川信夫や黒田嘉夫などとともに、その詩に強烈なインパクトを与えられたのをおぼえている。当時つけていた日記的なノートに、吉本隆明の幾つもの詩篇を書いてコピーしていた。
吉本隆明代表詩選

やがて、「ポストモダン」の哲学ブームみたいなものがあり、おっちょこちょいな高校生は、『共同幻想論』から初めて、多作ともいえる著書をかたっぱしから読みだすことになる。… 続きを読む

「ビートルズを知らなかった紅衛兵」

518fmLyaEQL._AA300_

1966年から始まった文化大革命、その後10年にわたって中国の混乱をもたらす。

国家社会主義体制である中国の巨大な資本主義的繁栄は、この文化大革命が陰画のようにベースとなっているのは間違いがない。

1949年の中華人民共和国の成立からこの国を統治してきた毛沢東だが、1956年のフルシチョフのスターリン批判の頃には、中国共産党内の権力に揺らぎをみせており、自らが提唱した「反右派闘争」などの言論弾圧により求心力を得ようとしていた。しかし、経済的な失策は続き、1958年から開始された計画経済「大躍進政策」の失敗により、国家主席を辞任することになる。… 続きを読む

『ブレア時代のイギリス』 山口二郎

ブレア時代のイギリス (岩波新書 新赤版 (979))

イギリスでは新自由主義的な転換が最も早く行われたがゆえに、新自由主義の限界もいち早く明らかになった。新自由主義的な改革とは玉葱の皮むきのようなものであり、「官から民へ」を推し進めた終着点で、政府が何をするのかについては何の構想もない。新自由主義はその意味で政治の否定なのである。
「ブレア時代のイギリス」 山口二郎

イギリスは二大政党制の国であるが、この十年数年は労働党の政権が続いていた。
ところで、労働党政権を誕生させ、戦後最長の同党の政権を率いたトニー・ブレアは、いろんな意味で、小泉元首相と似ている。… 続きを読む

コーヒーを商うランボー / 「コーヒーが廻り世界史が廻る―近代市民社会の黒い血液」「ランボー砂漠を行く-アフリカ書簡の謎」

コーヒーを商うランボー

パリの街の小さく輝く真珠の虹色のような文壇の世界から姿をくらましたアルチュール・ランボーは、二十歳そこそこにして一切の詩作を放棄した。

残された詩作は「地獄の季節」・「イルミナシオン」の二集のみ。

それからオランダの植民地部隊の傭兵に職を得てジャカルタに渡り、到着早々に脱走兵となったり、キプロスの石切場の作業員になるなど、職と居場所を転々とする。

二十五歳で、当時の国際港のひとつだったアラビア半島の町アデンに着く。アデンは現在のイエメン。… 続きを読む

幕末動乱と中国マーケット 【3】中国市場をめぐる日本とアメリカの百年戦争 / 「黒船前後・志士と経済」 服部之総

◇幕末動乱と中国マーケット 【1】太平洋の時代 / 「黒船前後・志士と経済」 服部之総
◇幕末動乱と中国マーケット 【2】南北戦争とイギリスの暗躍 / 「黒船前後・志士と経済」 服部之総
14293516.jpg
【3】中国市場をめぐる日本とアメリカの百年戦争

 1894年 日清戦争
 1902年 日英同盟
 1904年 日露戦争
 1914年 第一次世界大戦
 1923年 日英同盟失効
 1929年 世界大恐慌
 1931年 満州事変
 1941年 太平洋戦争

続きを読む

幕末動乱と中国マーケット 【2】南北戦争とイギリスの暗躍 / 「黒船前後・志士と経済」 服部之総

幕末動乱と中国マーケット 【1】太平洋の時代 / 「黒船前後・志士と経済」 服部之総より続く
【2】アメリカの太平洋進出と南北戦争

 1851年 カリフォルニアクリッパーの太平洋航路開始
1853年 ペリー来航
1854年 日米和親条約

黒船前後・志士と経済 他十六篇 (岩波文庫) すでに、この頃にはペリー来航に先駆けてアメリカはニューヨーク・サンフランシスコ・広東(上海)を結ぶ太平洋横断の世界一周の三角貿易航路を開拓し、その搬送時間とコストの優位でイギリス船から積荷を奪っている。… 続きを読む

Top