「女と銃と荒野の麺屋」 チャン・イーモウ迷走中なり

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中国版ラジー賞(年間最低映画に与えられる賞)が2010年から出来たそうで、それが「金の箒(ほうき)賞」
その第一回の受賞作品がこの「女と銃と荒野の麺屋」になります。チャン・イーモウみたいな巨匠がこういう賞をとるっていうのも、なかなか面白いもんですね。おめでとうございます(笑)
そのためにストレートアヘッドな純愛悲劇「サンザシの樹の下で」より公開が遅れたということですが、「サンザシの樹の下で」がそれなりに日本の観客に好評だったというところから余勢をかって公開したんでしょうか。
しかし!チャン・イーモウの作品です。例え最低作品賞だった見逃すわけにはいきません!
すでに日本公開からしばらくたって、午前中のプログラムになっていた最終公開日の六本木シネマートに向かいました。昼前の休日の六本木です。さわやかですね。
シネマートの隣のビルの階段には、酔っぱらってつぶれた若いサラリーマンが大股開きで寝ていましたが。
コーエン兄弟の80年代の出世作「ブラッドシンプル」のリメイクということですが、原典の乾いた暗さをそのまま喜劇仕立ての演出に転換させています。人間をよくよく観察してみると、シリアスと笑いは表裏の関係にあるわけです。だから目のつけどころは良いのではないかと思いますよ。中華仕立てのブラックユーモア。でも、まあ本作の笑いどころが笑えるものかといえば、ちょっとどうかなとも。
無国籍風の荒野のラーメン屋の設定は、ちょっとばかし中途半端だったかな。
「芙蓉鎮」の豆腐屋みたいに繁盛している必要はないけど、「中国娘」(2008年ロカルノ映画祭金豹賞のインディペンデント映画)の麺屋くらいの映画の中の必然性が欲しかった。
警察がガサ入れに来るときに、饗応してごまかそうとする場面で、店の従業員何人かがかりで麺をのばすアクロバティクなシーンが面白く目を奪われますが、なんかこのシーンのために麺屋にしたんじゃないかと思わせるぐらい、あんまり意味ないですね。
まあ、架空の時代を超越した感のある設定ですから、これぐらいでいいのかもしれませんが。
カネで買われた美人(ちょっとクセはあるけど)の嫁と、子どもが出来ないのを嫁のせいにして虐待する金持ちのダンナという設定は、「菊豆」そのまんまですね。不倫相手がなんともたよりにならない使用人のヤサ男というところもそのまんま。
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情事の場所が人里離れた丘の上というのもそうですな。セルフパロディということですかね?
浮気をみつけたダンナが警察官雇って暗殺を依頼するのだが・・・というところからはコーエン兄弟の筋を比較的そのまま辿っています。
いちいちシーンが異様な色彩に包まれているのはチャン・イーモウならでは。まあしかし、喜劇仕立ての中だと、原色のガチャガチャ感がやりすぎな感じも受けなくはないです。
全体として、そんなに悪くはないですよ。面白い。


が、チャン・イーモウがこんなのやる必要があるのかどうかというと極めて疑問。
北京五輪の演出の後の第一作がこれですか。どうしちゃったんだろうという感じですね、正直なところ(笑)
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「サンザシの樹の下で」は、それなりによく出来ている映画でしたが、あまりにも直球っぷりにびっくりしましたが、こっちの作品も違う意味で驚き。やりつくしちゃったんでしようかね。うむむ。
FWF評価:☆☆☆★★

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