無頼派のフランソワーズ / 「サガン -悲しみよ こんにちは-」 ディアーヌ・キュリス 【映画】

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◇「サガン-悲しみよ こんにちは-」公式サイト
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いやまたこれは無頼派なサガンですよ。
この監督はよくぞここまで描ききりました。
なので、そのところからして、ハッピー・エンドなんかあるわけないんですよ、この映画には。
小説の中の登場人物に危険なまでに接近して、そしてお互いの破滅の姿のリアリティを補完しあう。酒、ギャンブル、カネ、クスリ、愛憎、家庭への憎悪とそこからの逃亡・・・すべて無頼派のテーマじゃないですか。
それを、ちっこい神経質そうなかわいい女が、うつむきかげんで髪を前に垂らしたまま、下から敵意を軽くちらつかせるような視線をしながら、見事に、やりきっている。
いい映画かどうかはともかくとして、この主人公役の女優は素晴らしいですね。
マンガのような薄っぺらな男どもの演技も、まさにこの主人公の女優の演技を光らせるために、あえて抑えたのではないかと思わせるぐらい、このサガン役がガッチリはまったシルヴィー・テステューはおみごと。
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(こちらはホンモノのサガン)
この映画のサガンに否定的な思いをする人は、それだけのこの女優に挑発されているという仕掛けですね。
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10代の処女作であり、この映画の邦題のサブタイトルになっている「悲しみよ、こんにちは」からして、エレクトラ・コンプレックス(父親に対する近親相姦的な娘の愛情)に揺れる主人公の、ちょっとおしゃれな舞台回しの愛憎劇。
この流行作家の作品については、これぐらいしか知識がなかったのですが、なるほど、この作家は、こうしてエレクトラ・コンプレックスに憑つかれる自分を、無頼派的にやりとげたわけたんだねえ・・・と感慨深かったです。
(父親のような)年上との恋愛・ギャンブル・自動車事故・母親的なものへの嫌悪、それら「悲しみよ、こんにちは」で提出されていたテーマを、すべて繰り返しながら、目の前の秩序からの逃亡の痛みを、破天荒であることでごまかし続ける。それが、サガンの生き方で、そしてその逃亡は孤独であらざるを得ない。
同性愛めいた奇妙な友情や、つかず離れずの取り巻きとの距離感の微妙さも、孤独であらんとした彼女の生き方なんでしょう。
それは、彼女自身が覚悟しているから、作品の最後に出てくる若き日に預言するように書いた墓碑銘のラストが映える。

自分は、他のサガンの作品が猛烈に読みたくなりました。
映画力に満ちた作品です。佳作でしょう。
ぼんぼんと投げ捨てられるようなシーンが説明的に重ねられるところだけが残念ですけれども・・・。
FWF評価 ☆☆☆

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