KING OF B級映画監督のアメコミ調ナチ映画 / 「イングロリアス バスターズ」 クエンティン・タランティーノ

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◇「イングロリアス バスターズ」公式サイト
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映画の前宣伝をいろいろと見るにつけ、そんなことはないでしょ、だってタランティーノなんだから・・・と各種の記事を目を細めて懐疑していたわけですが、やっぱり案の定!
タランティーノにとって、ナチの善悪とか人間模様のさざなみとか友情・努力・勝利の世界観や、愛だの悲しみなどなど、そんなものはどうでもいいんですよ。
もちろん、痛快娯楽ですらない。思想もいらないから、得るものなど何もない。
結局はどんよりと映画は終わり、後味はひたすら脂っこく、消化に悪くて翌日まで胃もたれが残る。
筋立てを簡単にまとめると、ナチに追われたユダヤ人の女がその正体を隠してパリの映画館の支配人となり、ひょんなことから、その映画館はナチの国策映画のVIPプレミアム上映の劇場に指定され、復讐のために女は上映のその日に映画館を放火することを計画する。
一方、情け知らずのアメリカの特殊工作部隊「イングロリアス・バスターズ」は、その映画館に潜入し、ヒトラーをはじめとするナチの幹部の暗殺を指令される。
ふたつの思惑が、平行しながら、上映会の日にむけて、ゲシュタポの大佐との丁々発止のせめぎあいが続き・・・
・・・といったところですが、まあこれがどうにもこうにも、タランティーノワールドを思う存分発揮してくれるわけです。
ストーリーの仕掛けは精密。
例によって、饒舌な登場人物が面白おかしいセリフをこねくり回しつくしたり、一方で安定してキビキビとした映像が過不足なくストーリーを伝えてくる。
だから安心して物語に身を委ねようとこちらは油断するわけですが、そこにざっくり・ぱっくり・ドッキリと、感情を逆なでするようなバイオレンスシーンが計算されて出てくる。
いやはや、キル・ビルはじめとしてタランティーノを観たことがある方は、彼の映画が娯楽映画ではございませんということを知ってのことかと思うのですが、やっぱりこれはカルトです、B級の極みです・・・という映画になっております。
ヒトラーはじめとするナチの幹部なんか、みんなコミックの登場人物みたいですよ。
映画館の上映の結末のシーン・・・あそこなんか本当にアメコミのノリですね。
スクリーンが燃えて、煙に映像が映るところなどは、アメコミだったら煙が呪いをかけたユダヤ女の姿にカリカチュアされて出てきそうなところですし、登場人物を矢印で名前の説明するところなども、あれもアメコミ調ですね。
まさに荒唐無稽、映画の仕掛けだけが突出してすばらしく面白い。そして、見たものは皆どんよりとした思いをして帰っていく。
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そんなわけで、タランティーノの映画なんです。デートで観にいったり、感動とかカタルシスとか痛快・スリルとか求めるのはお門違いな話です・・・というような弁護をレビューでも多数見かける理由がわかります。
まあ、ただタランティーノのこれまでのラインナップに位置づけられたときにはどういう評価になるのかな・・・と冷静に思ってみると、どうなのかなという気もしますね。
お得意の音楽を気の利いたDJのように使いこなすアイディアも今回はやや切れ味が少なくなっているような気もしますよ、実際は。
いずれにせよ、よく出来ています。KING OF B級映画のタランティーノ、その称号は自分の中ではまだ健在です。
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FWF評価:☆☆☆★★

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