弱い日差しの中の日光浴 / 「サンシャイン・クリーニング」 クリスティン・ジェフズ

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◇「サンシャイン・クリーニング」公式サイト
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過去のスターが没落末に拠るところなくなりながらも、かつてあった温もりのある家族を見出していき、そして家族の再興に努力し始めるが・・・。
ひとつの定型物語ですが、この一年観たアメリカ映画では3本目。
しかも、それがどれもこれも典型的な白人社会。
ザック・エフロンの高校のバスケットのスター選手が、冴えない中年男になって家族から三行半を突きつけられてしまうところから始まるファンタジー、「セヴンティーン・アゲイン」。
80年代のアメリカンハードロックの時代に栄光の高みにあったプロレスラーが、家族に恵まれずに、リングを結局、自分のホームとみなさざるを得ない物語、「レスラー」。
この作品では、おそらく東欧系の人だと名前の「コワルスキー」というところから推察しますが、それほど今のアメリカの白人社会は改めて家族を見出さなければならない苦境にあるのでしょうかねえ。
大学のチア・リーダーの人気者だった主人公(エイミー・アダムス)は、今では大学の同級生の不倫で生まれた子供を育てる身。ハウスキーピングの仕事では子供を私立の学校に活かせることができず、一年発起して、殺人や自殺現場の清掃専門の業者を立ち上げる。
手伝うのは、子供のころの母親の自殺をまだ引きずっている妹(エミリー・ブラント)。
家では、変わり者の子供と年老いて未だ起業を夢見てトンチンカンを繰り返す老齢の父。
頼れるアドバイスをしてくれるのは、片腕の清掃用具専門店のプラモ好きの男。
いやはや、これだけ底辺を描いて、しかしそれでもなぜかポジティブで明るい映画になっているのは、摩訶不思議なことです。そしてなぜだか、ひたすらユーモラスで心地よい。
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エイミー・アダムスは、「ダウト」の超絶演技バトルではやや抑えた役どころでしたが、こちらでは伸び伸びと、前向きなシングル・マザーを演じています。
エミリー・ブラントは、キュートでありながら、ちょっと孤独で悩みがちなフリーターを演じています。
総じて、俳優は皆うまく、そしてそれを映画の「サンシャイン」のフレーズのとおり、おおおらかに明るく演じているのです。
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血まみれの現場清掃を通じて、妹が自分の母親の死を少しずつ受け入れていく様も、しゃれた展開。それぞれ、テーマにある苦境の中で家族の再建を行うしぐさを、少しでもシリアスに書いてしまうと、この映画のぽかぽかとした暖かさがわからなくなります。
例えるなら、この映画は、太陽の日差しの少ない欧州の人たちがよくやるような、弱い日差しながらも太陽をもとめて芝生に寝転ぶ日光浴のようなものです。これは、なかなかこういう微妙な温度感を表現できている映画はないのでは。

冬の太陽の一瞬のぽかぽか感・・・よかったですよ。
FWF評価:☆☆☆★★

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