せめて苦みやもっと深い香気があれば / 「シルビアのいる街で」

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◇「シルビアのいる街で」公式サイト
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6年前に出会った「シルビア」の面影をもとめる青年のフランスの古都ストラスブールでの数日間を描いた作品。
主人公はホテルに宿泊している外国人?と思しい二枚目。高等演劇学校の前のカフェでただひたすら女の顔を見続けている。
女の顔は、いくつも通り過ぎているのだが、出会いにもならないし、ただ時間が経過していくだけである。
そんな中、ひとりの女性の姿をみつけると、青年はやおら立ち上がり、ストーカーまがいに彼女を追っていく・・・。
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凝ったサウンドスケープと、光の反射を追ったカメラの静謐さが対比を示していて、これはこれでそれなりによろしい。
そして、映画は詩的な光景を出るまでもなく、物語のクローズとなる。
監督は小津ファンとのことで、それにひっぱられたのか、蓮実重彦がまたもや本気かどうかは疑わしくなる推薦文を寄せている。蓮実重彦がチラシで推奨するとき映画は、落第寸前の生徒に及第点をあげるための一言コメントのようにとらえている。
そうでなければ、爺さんはやっぱり薄味少量が好きなんだなあというぐらいの結論にしかならない。
もちろん、蓮実重彦は今でも脂身ねっとり塩っからくて痛風に悪そうな映画が大好きなのは良くわかっていますが。
小津はいつも何かがなくなっていったり、消えていってしまったりする物語を撮ってきていた。
この映画も、基本的には何かなくなっているものや消えているものを、なんとか手繰り寄せようとする青年の物語ではある。
しかし、あまりに薄味である。
せめて苦みやもっと深い香気があれば・・・と思いながら、いつもイメージフォーラムの帰りによるカフェでエスプレッソでも啜りにいこうとすると、唯一あの周辺でコーヒー&シガレッツの店だったところが消えていた。
映画の青年が「シルビア」を見つけられなかったように、「最悪だ」とつぶやきながら、わたくしは仕方なく、とぼとぼと宮益坂を駅にむかって坂をおりていくわけである。

FWF評価:☆☆★★★

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