もちろんバカな監督なのではない。監督バカなのである。
監督バカ丸出し、そんな映画のベスト3は以下のとおり。
1.地獄の黙示録(F.コッポラ)
2.ポンヌフの恋人(レオス・カラックス)
3.フィツカラルド(W・ヘルツォーク)
現実と映画の境目がわからなくなってしまい、巧妙な映画作品としての矜持を必要以上にぶちあげつつも、いつの間にか、映画監督としての自分をテーマにした映画を撮っている。
莫大な予算をさらに超過し、それを撮り続ける格闘そのものが映画として成立してしまうのも面白いところ。
『地獄の黙示録』は、コッポラの妻によって『ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録』としてドキュメンタリーとなり、『フィツカラルド』の撮影の顛末は『キンスキー、我が最愛の敵』となる。
役者は次々と交代し、プロデューサーは逃げ出す。
自分の恋愛物語を、恋人そのひとに託して出演し、その結果ハッピーエンドで終わる映画がかろうじて出来上がるが、現実の二人は破綻するのが『ポンヌフの恋人』
パリのポンヌフ橋をそのまま巨大なオープンセットでつくりあげたのも凄かった。『地獄の黙示録』では、フィリピンの山奥にホンモノの死体を転がした「闇の奥」の神殿をつくりあげる。が、台風であっさりと流されてしまうのだ。
そして『フィツカラルド』では、ホンモノの客船を山に登らせてしまうのだ。
莫大な予算のスペクタクルなら、自分が未見のハーワード・ヒューズの『地獄の天使たち』というのもあろう。スコセッシの『アビエイター』のアレだ。しかし、この『地獄の天使たち』には内省が足りない(と思う)。
第三者からは全く理解不能な「夢」
これに挑んでいく、無垢とはいえないし、また大人ともいえないオッサンの物語。
アマゾンの山奥にオペラハウスをつくるという荒唐無稽な夢を追いかける主人公は、最初はジェイソン・ロバーズで、助手はミック・ジャガーという組み合わせだったらしいのだが、この二人が逃げ出して、結局クラウス・キンスキー。
だが、このクラウス・キンスキーが、狂気と幼児性を絶妙にミックスさせたオッサンを見事に演じている。
このオッサンの良き理解者なのが、娼婦のボス役のクラウディア・カルディナーレ(!)
イタリアの至宝ともいえたこの人が、ちょっとおばちゃんになって、クラウス・キンスキーに寄り添い、夢を理解する唯一の人となります。
この映画のテーマは白なんでしょうね。いつも真っ白なスーツを着たキンスキーと、やはり白い船。この白が、原住民や黒人に囲まれた生活の描写の中で、嫌味なまでに浮き立ちます。この色が密林や土の色の中で、幻想的に機能しているのです。
なんとも強烈な映画体験!
イメージフォーラムのヴェルナー・ヘルツォーク監督特集にて。
コメント