個室劇のシャロウフォーカス / 「絞死刑」 大島渚 【映画】

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大島渚作品の中で最も好きな一作。
小松川女子高生殺人事件の犯人の死刑執行をモデルに、観念的心理ドラマを得意とする大島渚がその本領を極めてスマートに発揮した作品。
死刑制度の廃止を主張するようにみえる冒頭の観客への投げかけから、死刑執行が行われる刑務所の空撮から始まるが、その基本は密室劇に近い。
シーンも登場人物も、時に空想的であり時にコミカルですらある逸脱を繰り返しつつ、腑わけするかのように血塗られた部分をひとつひとつ整理していく手際は見事。
美術も死刑執行室の個室に焦点をあわせることができているため、やたらにキマっている。
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小松川女子高生殺人事件と死刑制度について、そして彼が残した著書の主張、そして取り巻く時代、それらを創造社のいつものメンバーで激論しながら語り合ったのだろう。
そしてそれが誠実に結晶したかのような作品である。筋立てもテーマも、決して混乱していないし、盛り込みすぎてもいない。テーマがそういうものだったから、むしろ、盛り込みすぎないと語れないものなのである。
佐藤慶、渡辺文雄、小松方正、戸浦六宏、そしてなによりも小山明子・・・大島映画に切っても切れない俳優にして、そして仲間達が、完璧なコンビネーションの演技もひとつの見もの。
血塗られた臓物を並べていき秩序立てて物語としていく密度の濃さが、自分にとっての大島渚の魅力。
時として、それがあまりにもエグすぎてしまうことすらあり、それが大島作品の良いところでもあり悪いところでもある、と思う。
この作品は物語のフォーカスも安定していて、ディープフォーカスのような物語の奥行きで観る側を過剰に混乱させる作りにはなっていない。小品といえば小品、しかしそれにとどまるテーマではない。

ていうか、この予告編、ほとんどアジテーションですね。凄すぎます(笑)
【参考】フーコーと死刑論メモ

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