現代マンハッタンのフィールドワーク / 「私がクマにキレた理由(わけ) 」 シャリ・スプリンガー・バーマン  【映画】

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民族学を専攻して大学を卒業したスカーレット・ヨハンソンの主人公がつぶやくモノローグがある。
「研究者が研究対象の集団に入り込みすぎて、研究として逸脱することがある。これをすなわち原住民化という。」
「研究者の視点が、往々にして対象集団を変えてしまうことがある。」
往々にして、物事を客観的に見るということにはワナがある。
自分自身をとりまく環境を、あたかも研究者が対象を取り扱うように客体視することによって、自分のポジションそのものを無効にしてしまう・・・つまり現状を逃避してしまうトリックに使われる。
研究者の視点・・・けれど、その実は単に就職浪人のアルバイトの生活。
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この映画は、マンハッタンの現在の第二の「金ピカ時代」をフィールドワーク(現地調査)するひとりの女のコのコメディ。
スカーレット・ヨハンソンにぴったりな、気弱で憂いもあるけれど、それでもポジティブで元気な女のコが、ニュージャージの郊外からの視点で、マンハッタンの親子の生活に入り込む。彼女は、それを最初あたかも研究対象のようにうけとめようとするのだが、そのうちに、その対象に入り込んでいってしまう。
冒頭のモノローグは、そういう状態を指している。
けれど、そもそも民族学では、研究対象に深く入り込み、そこに住む人々の視点から考えることをしなければ、本当にその文化を理解することはできないとも教えていることも追記しておこう。
スカーレット・ヨハンソンが微妙な立場に揺れる心を、こまやかな演技でよくとらえている。

正直あんまり期待していなかった映画だったのだが、よかったですよ。
生活臭たっぷりのスカーレット・ヨハンソンを観たくない!という人にはオススメできませんけれども。
FWF評価: ☆☆

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