RED ONEカメラの威力 / 「ガールフレンド・エクスペリエンス」 スティーブン・ソダーバーグ

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「ガールフレンド・エキスペリエンス」公式サイト
超高級コールガールのちょっとした日常の生活を通じて、ニューヨークの現在のアッパークラスのビジネスマンやその人たちの新鮮な生活風俗をとらえた映画・・・そんなまとめになる映画で、それ以外になんとも評しようがない物語である。
だから、最近だと「フローズン・リバー」や「サンシャイン・クリーニング」といったプア・ホワイト(白人貧困層)の主婦の物語や、「レスラー」のような80年代ヒーローの没落の物語などを観て、アメリカの現在に疑問を抱いている人にとっては、とてもこの映画の登場人物に共感は出来ないだろう。
かくいう自分がそうなのであるが。
高級マンションや自家用ジェット、有名レストランで話されるのは、チープな政治話や実に夢のない投資の話。そんなの楽しいのかこいつら?とムカムカしてしまうと、この監督の思う壺ということなのだろう。
フィットネスクラブ、なんだかよくわからない星占い(?)、呑んでいるアルコールは低アルコールのコロナ、共和党候補は推されてオバマは批難される。
なんだか、これはオレの嫌いなもののオン・パレードなわけですよ。
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しかし、それでも、この映画には飽きなかったし、ずいぶん楽しめました。
理由はこの映画の撮影技術とグラフィックセンスにつきます。
素晴らしい。
映画に行く前から、ポスターに使われているグラフィック・アートがよろしくて、それが原因で観に行こうと楽しみにしていたくらいですから、ずばり正解。
そんなわけで、今アメリカで流行りなんだから知らないですが、ドキュメンタリータッチの筋立てや編集やカメラワークは鼻につくものの、この撮影技術とセンスには参りました!
で、家に帰ってきてから撮影監督とかを調べようとすると、公式サイトには「RED ONEカメラで撮られた作品」と記述されている。浅学な自分ははじめてこのRED ONEというカメラを知り、気になって調べてみると、なんとこの映画はそのデジタル「シネマ」カメラで撮られていたんですね。白熱灯の光が本当に綺麗に取れてますし、夜のシーンもデジタル処理だろうと思わせる発色だったのですが、まさかフィルムではないとは思いませんでした。
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これみよがしに、手前の小道具の被写体にピントをあわせて、背景になるぼかしたところで登場人物が演技するシーンや、逆に手前に役者を置いておきながらぼかして、ワザとカラの背景にピントをあわせるなどをこれみよがしでやったりしてましたが、たぶんこういうピントの深度を使ったワザは、通常のDVカムのようなデジタルビデオでは難しいのではないかと想像します。
また自然光もうまく撮りこんでいて、これゆえに自分はデジタルビデオカメラではないと思い込んだと思われます。
ここまで出来るRED ONEのような技術があれぱ、さすがにフィルムの時代も本格的に終焉を迎えつつあると考えざるを得ないですね。
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RED ONEカメラについて、素人の自分に解説するのは無茶だとは思いますが、ちょっとだけまとめてみると、DVカムのようなデジタルビデオカメラとは違い、画素数がスティルのデジタルカメラなみのもので、圧縮しないデータをそのまま取り扱えるものらしいです。
また価格も安いため、今後急速に普及することが予測されています。もうすでに日本の映画でも何本か撮られているようです。
*SHOT ON RED
自分が観た映画だと、本作と同じスティーブン・ソダーバーグ監督の二本立てのゲバラ映画(自分はこの映画は全く買ってませんが)、それからおととし公開のトム・ハンクス主演の『天使と悪魔』もそうらしいです。確かにこの映画も夜のライトアップされた街のシーンの色合いが独特だったのを思い出します。
スティーブン・ソダーバーグは、この映画では監督と撮影も手がけているとのこと。
というか、昔から撮影監督兼務でだいぶ映画を撮っているということです。
なるほど、この映画はどちらかというとグラフィックと映像技術の映画として観なければならないということでしょう。

総じて、それなりに楽しめた映画でした。
まあ、それでもきっとこれが珍しくない時代もすぐに来るのでしょうから、そうしたら観賞に耐えられるものとなるのかは少し疑問ではありますが。
FWF評価:☆☆☆★★

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