モントリオール世界映画祭って / 「悪人」 李相日

◇「悪人」公式サイト
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突然ですが、モントリオール世界映画祭の2006年からの日本映画の受賞歴をちょっとまとめてみます。
2006年 最優秀作品賞 「長い散歩」奥田瑛二
2008年 最優秀作品賞 「おくりびと」滝田洋二郎
     脚本賞     「誰も守ってくれない」君塚良一
2009年 監督賞      「ヴィヨンの妻」根岸吉太郎
2010年 最優秀女優賞  深津絵里 「悪人」
1978年から開催されているこの映画祭、その間にグランプリは日中合作の「未完の大局」のみ。
83年と99年に田中裕子(「天城越え」)と高倉建(「鉄道員」)で主演賞をそれぞれ受賞するものの、それ以外はパっとしない受賞歴があるのみ。
もちろん70年以降の日本映画なんてそんなもんさと考えるのが妥当ともいえるだろうが、しかしそれならば、最近のこの映画祭の日本映画の受賞ラッシュはいったいなんなのか?
誰も守ってくれない」が2008年の脚本賞になったときに、やっぱり映画祭の賞ってわかんね!と疑問がわきあがったわけなのだが、それでも50年代の日本映画全盛時代の再来を思わせるほどの賞ラッシュになんとなくモヤモヤ感が拭いきれません。
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さて、とはいうものの、この映画に関しては悪くはありません。
深津絵里も大したものだと思います。
30も過ぎた、うだつのあがらない独身女性の孤独を、すっぴん顔もちらほら混ぜながら見事に演じきっています。
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キャタピラー」の寺島しのぶのベルリン映画祭の最優秀女優賞とともに、日本女優はこういう汚れでエロも体当たり系の女優さんが、海外では受けるんでしょうかねえ。こちらもよくわかりません(笑)
母に捨てられた田舎町の解体工の孤独や不器用さも、妻夫木聡くんが丁寧に演じていました。ちょっとした縁で、この人とは今みたいに有名になる前にいろいろ関わってきましたが、もう立派な日本のアクターですね。ホリプロで同時期に出てきた藤原竜也が早咲きでしたから、このライバルに比べてスタートは遅かったんですけどね。おじさんは感慨深いです。
田舎町の現在系の風景や、出会い系サイトや携帯の使い方もリアル。
かたやエビや魚の内臓を書き出す母や婆さんの女達の、古今変わらぬ生活感が対置されながら、極めて古典的な「悪」の問題が語られていきます。結末は、悪の問題を考えるうえでの一種の定型の結末でしょう。
原作は読んでませんが、このへんは映画化権をとったところから成功は始まっているのではないでしょうか。無駄なく、風俗や現代的な問題意識を手堅くストーリーにまとめきっています。そつなく良作。
結末近くの灯台のシーンなどは本当に良くできていると思います。
今年の日本映画の良作「パレード」「告白」そして本作「悪人」が、それぞれ現在日本のリアルな「悪」の問題を取り扱っていることに注目するべきではないかと思っています。
ここまで豊かになり、食うものも寝るところにも困らないわたしたちは何故まだ「悪」と対峙しなければならないのか。それにどういう態度で接しなければならないのか。
この映画もそんなことを考えるところが多い仕掛けをもった映画であります。

そんなわけで、別にこの映画にケチをつける気持ちは毛頭ございませんが、それでもやっぱりモントリオール映画祭はどうかと思うわけなんですよね(笑)
FWF評価:☆☆☆☆★

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