川島雄三の駆逐艦 / 「とんかつ大将」 川島雄三

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とんかつ大将

1951年から、川島雄三は「商売になるもの」として、軽量級の駆逐艦のような作品を松竹で量産し続ける。
1952年には、本作品「とんかつ大将」を皮切りに、5本の軽喜劇やタイアップものを監督し、1955年に日活に移籍するまでその勢いは続く。
実際のところ、川島雄三の名作といわれるものは、この後に現れるのだが、スピーディーなプロットや独特な編集リズムの冴えは、このプログラムピクチャ量産時代に培われたはずである。
さて、本作品。
浅草の下町の長屋の青年医師が主人公。
大病院の拡張に伴う立ち退き騒動という社会派的な筋立てに、とんかつ屋の女将と大病院の跡取り女医との恋の鞘当てや、主人公の素性の秘密をメロドラマ風に織り込んだあらすじ。
青年医師の戦後民主的正義感の人工着色料的な臭さは、この時代だから致し方ないのかとも思うが、何故青年医師が長屋でごろごろしていていられるのかもよくわからず、やや無理があったりもする。しかし、これもご愛敬というところか。
この主人公役は、川島雄三の監督デビュー作「還ってきた男」から、3本の作品を共にした佐野周二。関口宏の父であり、なるほどよく似ている。
松竹三羽烏で戦前から華々しい活躍をしているが、本作「とんかつ大将」の前年の名作の誉れ高き「カルメン故郷に帰る」などでは、田舎の盲目の音楽教師などの陰影のある役どころもこなしはじめている。
「とんかつ大将」では、とんかつ好きの下町裏長屋の医者という設定にしては、オシャレで二枚目な正義感。ストーリーからすると、ここもやや違和感がある。
駆逐艦のだいご味は、砲戦や夜陰の間隙をぬって、高速疾駆で渾身の魚雷一撃を放つ、そのヒットアンドアウェイな戦術にあるのだが、この作品はどうなのだろう。無理して、対空護衛についてしまった小艦の悲哀も感じてならないのだが。
いずれにせよ、このヒットアンドアウェイな映画づくりは、「サヨナラダケガジンセイサ」とうそぶいていた川島雄三の持ち味として、この時代に少しずつ磨かれていったものなのだろう。
神保町シアター特集「映画と酒場と男と女」にて。

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