中華街の中国人たち、つまり在日華僑の暮らしを、学校という場から映し出したドキュメンタリー。視点として、たいへん新鮮である。
子供達の日常風景を映像の中で大切に取り扱いながらしながらも、少しずつ少しずつ歴史の暗部も含めた、中華街の華僑社会の生い立ちや秘密にまで接近する。
ただし、それはあえて軽くとどめられる程度に抑えられているのが、この映画のドキュメンタリーとしての端正さではある。
ここを不満に感じてしまうとキリがないかもしれない。
この映画を観て、恥ずかしながら初めてわかったのは、中華街の人達にも世代があり、この映画に出てくるようなオールドカマーな華僑の社会の人々と、今、それこそ中華街でカタコトの日本語を使って働いているようなニューカマーの人達とは世代が断絶しているんだということ。
この映画に出てくる華僑社会は、完全にハイブリットに日華のカルチャーを「横断」している。もちろん、宙吊りのまま危うい狭間にいるという視点も可能である。
活き活きとした子供達の姿がある一方、国民党政府系と共産党系の対立が「学校事件」のような暗い事件や、決して大きく触れられることがない差別や迫害の歴史を巻き起こしてしまうことすらあることも、かたや大人たちのインタビューの中で、さらりと触れられる。
ここから映画の伝えなかったことを考えてくれ、という余韻が残る佳作である。
FWF評価: ☆☆☆
在日華僑の現代史 / 「中華学校の子どもたち」 片岡希 【映画】
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