無人島レコード a-5 / Keith Jarrett “My back pages”

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20代の頃、何かに憑りつかれていた、と今では思う。

人は自分自身など客体化して視ることは出来ないものだ。

自分自身の速度の中でしか物事を見ることが出来ず、そうしてひたすら人を傷つけて、かたや自分はといえば、硬い鱗のような自尊心をまといながら、まわりからいかに傷つけられなくてすむか、そのために如何に強くあることが出来るかを考え続けていた。

コマは回転することでしか自立することが出来ない。接地する芯が地面をえぐり続けていくが、コマの運動が残すものはそれだけだ。

いつかどこかで、そういう自分自身を省みるときがくるのだろうか?

そう思う自分の精神の弱さを一生懸命否定しながら、しかし、そういう日が来ることを切なく予感していたのだろうと、今では思う。

いや、しかしそれは終わったわけではない。

 ”My Back Pages”

Crimson flames tied through my ears
Rollin’ high and mighty traps
Pounced with fire on flaming roads
Using ideas as my maps
“We’ll meet on edges , soon,” said I
Proud ‘neath heated brow.
Ah , but I was so much older then ,
I’m younger than that now.

深紅の火炎が耳の中で繋がれ
赫奕として、大きな罠が襲いかかる
火焔の道に立ち昇る炎
地図を頼りにするように知恵を働かそう
「ほどなくして危難に立ち会うことになるだろう」と私は言った
眉頭に熱い自信を漲らせながら

それは皺深き日々だった
私は今の方がずっと若やいでいる

Half-wracked prejudice leaped forth
“Rip down all hate,” I screamed
Lies that life is black and white
Spoke from my skull. I dreamd
Romantic facts of musketeers
Foundationed deep , somehow.
Ah , but I was so much older then ,
I’m younger than that now.

難破しそうな偏愛が突如にして顕れる
「憎しみなどひき裂いてしまうがいい」
私は叫んだ
人生などは黒でもあり白でもあるのだ、という嘘が
頭蓋から話されることを想像した
銃兵のロマンは
ともかくも現実に深く根ざしている

それは皺深き日々だった
私は今の方がずっと若やいでいる

Girls’ faces formed the forward path
From phony jealousy
To memorizing politics
Of ancient history
Flung down by corpse evangelists
Unthought of , though , somehow.
Ah , but I was so much older then ,
I’m younger than that now.

少女の顔は
偽りの嫉妬から
古代の歴史が記銘された政治へと続く道に
まっすぐ向いている
亡骸の姿に堕ちることを
いかようにしても
福音伝道者は考えないかもしれないし
考えるかもしれない

それは皺深き日々だった
私は今の方がずっと若やいでいる

A self-ordained professor’s tongue
Too serious to fool
Spouted out that liberty
Is just equality in school
“Equality,” I spoke the word
As if a wedding vow.
Ah , but I was so much older then ,
I’m younger than that now.

自ら叙品した教授の教えは
馬鹿にするにはあまりにも厳粛だった
滔々と語るには
自由は学校の中の平等にある、と
「平等」
私はつぶやいた
まるで婚姻の誓いであるかのように

それは皺深き日々だった
私は今の方がずっと若やいでいる

In a soldier’s stance , I aimed my hand
At the mongrel dogs who teach
Fearing not that I’d become my enemy
In the instant that I preach
My pathway led by confusion boats
Mutiny from stern to bow.
Ah , but I was so much older then ,
I’m younger than that now.

兵士が銃を構えるように
手で雑種の犬を狙う
犬は私に教えるのだ
私が自分自身の敵になることを恐れてはいけない
船尾から船首までいたるところで
一斉に反乱がおきた船々の混乱に
私の行く末は導かれている、と私が説教する
その瞬間には

それは皺深き日々だった
私は今の方がずっと若やいでいる

Yes , my guard stood hard when abstract threats
Too noble to neglect
Deceived me into thinking
I had something to protect
Good and bad , I define these terms
Quite clear , no doubt , somehow.
Ah , but I was so much older then ,
I’m younger than that now.

そうだ、私の警戒心は高まっていたのだ
抽象的な恐怖は
無視するには崇高で
私を欺く善悪に対して叛くことが立派なことだと思い込ませていた
これらのことを定義しよう
明確に、疑いなく、いかなることがあれど

それは皺深き日々だった
私は今の方がずっと若やいでいる

キースジャレットは、すでに完成されたピアニストとして、数々のソロ作品を残しはじめた時代から、至上のピアノトリオといわれる現在形の作品群は好きではない。

“My back pages”は、1968年の作品Somewhere Before収録。

keith.jpg新進気鋭のピアニストとして、アートブレーキー&ジャズメッセンジャーズで事実上のデビューを果たし、チャールズロイドカルテットで、フォークとゴスペルタッチの流麗な音色と巧みなテクニックで名を上げた後の作品。

この時、キースジャレットは24歳。

My back pageは、もともとはボブディランの曲。
この時代、ロックという音楽ジャンルの隆盛により、様々なアプローチからロックミュージックのカバーが流行したが、この曲は原曲を相当に逸脱したキースの解釈により、切なく、そして華麗な名曲となっている。

チャーリーヘイデンの重いベースのテーマソロから始まるこの曲について、誰かが、ジャズ喫茶でこのアルバムをはじめてかけた時にチャーリーヘイデンのベースソロからキースのピアノが立ち上がってくると、その場の客から驚きとも感嘆ともつかない声があがった、と書いていたが、その感想は自分も全く同じである。

キースジャレットはこのアルバムのしばらく後、マイルスデイビスのグループに参加する。

マイルスが名づけたあだ名は「天才ぼうや(ジーニアスキッズ)」。

しかし、その頃マイルスが進めるファンク路線についていけないジャレットは、平行してソロ作品を出し続け、その後脱退。

いわゆる彼の傑作といわれる作品は、この時期に立て続けてに出てくる。

 

 

コメント

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